薬剤師のための皮膚科処方箋/小児のとびひの処方箋
研究所所長(監修)
だんの皮フ科クリニック 段野 貴一郎

小児のとびひ(伝染性膿痂疹)に対する処方例
疾患
伝染性膿痂疹(とびひ)
処方意図
- 細菌感染を経口・外用抗菌薬で治したい
- かゆみを経口抗ヒスタミン薬で抑え、掻破による拡大を防ぎたい
- ステロイド外用薬を併用し、とびひの元になっている湿疹病変を治したい
- 子どもに外用薬を別々に塗布することは大変なので、混合処方している


処方薬の要点
薬剤:クラリス®錠50小児用
- 一般名:クラリスロマイシン
- 皮膚細菌感染症に幅広く使われる
薬剤:アレグラ®錠30㎎
- 一般名:フェキソフェナジン塩酸塩
- 代表的な抗ヒスタミン薬(第二世代)
- 優れた止痒効果が期待される
薬剤:エクラー®軟膏0.3%
- 一般名:デプロドンプロピオン酸エステル
- strongランクのステロイド外用薬
- 軽度~中等度の湿疹・皮膚炎に用いられる
薬剤:フシジンレオ®軟膏2%
- 一般名:フシジン酸ナトリウム
- フシジン酸を主成分とする外用抗菌薬
- 黄色ブドウ球菌に強い抗菌力をもつ
用法(外用薬)
びらん面はガーゼ被覆が指示されている
その他のポイント
とびひは細菌感染症なのに、細菌感染症に禁忌のステロイド外用薬が処方されている
患者さんにこうやって伝えよう!
- クラリス®錠はとびひの原因となる菌を殺す抗菌薬です
- アレグラ®錠はかゆみ止めです
- 塗り薬には、とびひの原因となる菌に対する抗菌薬と、とびひの元になっている湿疹を治すステロイド薬が混合されています
- 患部をシャワーなどできれいにしたのち、1日2回、患部に塗布してください。ジュクジュクしている所、びらん面(皮膚がむけた所)は、軟膏を塗った上からガーゼで保護してください
Dr.Dannoのコレは覚えておきたい!
とびひとは
とびひは、「伝染性膿痂疹(のうかしん)」が正式名です。黄色ブドウ球菌と化膿レンサ球菌が主な原因菌で、湿疹病変、虫刺され、掻き傷、擦り傷などが元になって発症します
伝染性膿痂疹の分類

とびひの種類
とびひの治療方針と主な処方薬
経口・外用抗菌薬とともに、必要に応じて経口抗ヒスタミン薬、ステロイド外用薬、亜鉛華軟膏、消毒薬を使います
●経口・外用抗菌薬⇒治療の基本となります
- 経口抗菌薬:セフェム系(フロモックス®など)、マクロライド系(クラリス®など)
- 外用抗菌薬:フシジンレオ®軟膏、ゲンタシン®軟膏、アクアチム®クリームなど
- 最近では外用抗菌薬に対する抵抗菌が多いです
- 外用薬は殺菌作用に加えて軟膏基剤による皮膚保護作用を期待して使います
- 原因菌がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)と特定した場合は、MRSAに抗菌力を発揮するアクアチム®クリームを使うことがあります
●経口抗ヒスタミン薬⇒かゆみを抑えます
- ジルテック®、アレロック®、ザジテン®など
- 掻破を抑制し、とびひの悪化・拡大を防ぐのが目的です
●ステロイド外用薬⇒病変部の炎症を抑えます
- リンデロン® -VG軟膏、エクラー®軟膏など
- 湿疹、虫刺されなどがとびひの元になっているときは、これらの病変の改善を狙って使います
●亜鉛華軟膏⇒病変部の乾燥を図ります
- ガーゼに薄く延ばし、被覆します
●消毒薬⇒病変部を殺菌します
- かぶれたり、刺激することがあります
- 消毒薬ではなく、皮膚に付着した細菌数を減らす目的で、シャワー・湯ざましで洗浄するよう指示されることもあります
外用薬の塗り方のコツ
- 消毒または洗浄後、抗菌薬を塗布します。湿潤部・びらん面はガーゼ被覆します
- 外用薬の量が少ないと、患部にガーゼが付着して剥がしにくくなります
生活指導
- 患部を掻かないようにしましょう
- 鼻の穴に指をいれないようにしましょう。鼻前庭(鼻の穴の入り口付近)には原因菌が多いため、鼻下から発症するケースも多いです
- タオルなどを介してうつることがあるので、共用は避けましょう
- 患部が乾くまで、入浴・プールは禁止です。ただし、シャワーは菌を洗い流すので推奨されます
ここにピンときたら受診勧奨
- とびひの症状は、アトピー性皮膚炎や汗疹(あせも)に似ていますが、とびひは放置すると、どんどん患部が広まるので、早めの受診を勧めます
- 鼻の下、汗が溜まりやすい所、間擦部位(すれる所)に湿潤・びらん面があれば、とびひを疑います
さいごに・・・
外用薬は、医師が処方したものを手渡すだけでは期待通りの効果は出ません。十分な効果を発揮するためには、正しい塗布指導が必要です。塗布指導における薬剤師の役割は大きいです。このシリーズを読んでいただいた方にはわかっていただけたと思います。医師と上手に連携し、自信をもって服薬指導・塗布指導にあたってください。
前回の「帯状疱疹の処方箋」はこちら
[PharmaTribune 2013年7月号掲載]

監修者 ● 段野貴一郎 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
皮膚科からの患者さんに「このステロイドって強いの?体に悪くない?」と突然相談されて、答えに困ってしまったことはありませんか?ステロイド外用剤による治療は、薬の適切な使用がなにより大切。患者さんに尋ねられた時の薬剤師の対応が、その後の服薬コンプライアンスを左右するといっても過言ではありません。「皮膚科処方箋研究所」では、皮膚科処方箋の読み解き方と外用剤の服薬指導を経験豊富な皮膚科専門医がお教えします。
【略歴】
1975 年 京都大学医学部卒業
1977 年 カリフォルニア大学留学
1984 年 京都大学医学部皮膚科講師
1987 年 天理よろづ相談所病院皮膚科部長
1992 年 滋賀医科大学皮膚科准教授
2008 年 滋賀県栗東市にてだんの皮フ科クリニック」開院
皮膚科の薬剤をもっと学びたい人に・・・
ここがツボ!患者に伝える皮膚外用剤の使い方 改訂2版
著 段野貴一郎(だんの皮フ科クリニック)
B5判・148頁 定価(本体3,400円+税) ISBN978-4-7653-1569-2
http://www.kinpodo-pub.co.jp/shosai/e1811-1569-2.html

保湿剤、ステロイド、免疫抑制外用剤・・・さまざまな処方箋を例に、段野医師が処方意図の読み方と服薬指導のコツを解説します。処方鑑査のポイントや外用剤の製剤特性など、薬剤師であれば知っておきたい外用剤の基礎知識を、わかりやすく紹介。読んだ次の日から実践できる、即戦力の一冊です。
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