インフルエンザ脳症重症化のリスク因子とは CPT2を理解しよう 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする 監修:徳島大学疾患酵素学研究センター 生体防御・感染症病態代謝研究部門 木戸博 発症機序が解明されつつあるインフルエンザ脳症。重症化のカギの1つとされているCPT2について理解を深めましょう。最新の知見を知ることでインフルエンザ脳症に不安を感じている患者さんへのアドバイスに役立ててください。 3分間で理解するにはちょっと難しい!?今回は、がんばって学んでみましょう! CPT2とは? インフルエンザ脳症と診断され重症化した患児の多くでは、高熱時に酵素活性が急速に低下するCPT2の熱不安定性遺伝子多型が高頻度に見られている。CPT2は、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2(carnitine palmmitoyltransferase 2)の略で、脂肪酸代謝の一部である長鎖脂肪酸のエネルギー代謝を担う重要な酵素。CPT2の熱不安定性遺伝子多型は高熱時の重症化リスク因子と考えられている。 CPT2とインフルエンザ脳症の関係 インフルエンザウイルス増殖、サイトカイン増加に伴って糖代謝の低下、ATP産生量の低下傾向を示すが、これを補うために脂肪酸代謝が亢進する体内代謝変動が起きると一般的に言われている。 長鎖脂肪酸代謝を担うCPT2の機能低下を起こしやすい遺伝子多型を持つヒトでは、インフルエンザ感染による代謝変動に対応することができず、エネルギー不足になり、エネルギーを多く必要としている細胞、臓器から破たん症状が現れてしまう。これが脳の血管内皮細胞で起こり重症化した結果がインフルエンザ脳症といえる。 小児期を過ぎるとインフルエンザ脳症が減るワケ 乳幼児期から小児期にかけては、ATPの体内消費量が成人に比べて大きく、脂肪酸代謝への依存度が高い。4~6歳頃までに、脂肪酸代謝に比較して糖代謝系への依存度が増してより安定したエネルギー供給系に変化すると脳症の発症は減少する。小児期を過ぎるとインフルエンザ脳症で死亡する例はほとんど見られなくなる。しかし、大人でも飢餓状態となって脂肪酸代謝への依存度が高くなると発症することがある。 インフルエンザ重症化のリスク因子として、糖尿病や心不全患者、人工透析患者が報告されており、基礎疾患として体内代謝障害や、血管内皮細胞障害のある場合が多く、前記のサイクルが血管内皮細胞でわずかに回転するだけで致命的になる場合が多い。これとは別に、日常生活で異常はないが高熱ストレス下にCPT2の機能障害の起きやすい体質を持つヒトが脳症になりやすいと推定される。 糖代謝と脂肪酸代謝 糖代謝と脂肪酸代謝は、ミトコンドリア内でアセチルCoAで合流するように絶えず補いながら、エネルギー源であるATPの枯渇を防ぐ仕掛けになっている。 図.糖代謝と脂肪酸代謝の関係 CPT2に着目したインフルエンザ脳症の発症予防 CPT2の機能低下によるエネルギー不足が、結果としてインフルエンザ脳症につながる。この仮説をもとに、徳島大学疾患酵素学研究センター生体防御・感染症病態代謝研究部門の木戸氏らは、CPT2の転写を増加させ、ミトコンドリアのATPレベルを改善する可能性を高脂血症治療薬のベザフィブラートに見出した。細胞レベルでの知見だが、インフルエンザ脳症の治療のターゲット分子と治療法が見えつつある。 [PharmaTribune 2013年10月号掲載] 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×