上田ではなぜ、薬局の質を担保できるのか2

覆面調査、独自の認定制度―上田の薬局の質担保策

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

 上田では、「地域の全医療機関の処方箋を、薬剤師会会員薬局すべてで受ける」決意が、医療人としての立ち位置を明確にし医師との関係性を変えた点、それが疑義照会をスムーズにした点が見えてきた。薬剤師会がそこに責任をもつ以上、会員薬局の質の担保が必須となるが、上田薬剤師会は個別の薬局、薬剤師に対してどんな取り組みを行っているのだろうか。見えてきたのは独自の制度だ。

覆面調査員を使って会員薬局を第三者評価

 上田薬剤師会では、2009年に薬局の第三者評価も行っている。覆面調査員による「顧客満足度調査」だ。調査の趣旨に賛同した70薬局に覆面調査員が出向き、1患者背景の確認、2体調の確認、3併用薬の確認、4掲示物、5清潔感、6商品陳列、7スタッフの身だしなみ等9項目について、「優良」、「良」、「改善が必要」、「かなり改善が必要」の4段階で評価した(表1)。

表1 「患者満足度調査」の概要

 結果は個々の薬局にフィードバックされ、全体の成績が公表された。「優良+良」が半分以下なのは3併用薬の確認のみだったが、「一般薬販売時の患者情報収集が不十分との指摘は、一般薬を医療行為とする自覚が足りない現れだ」といった厳しい考察がなされている。

 会員薬局が患者の目にどう映っているのか。コストをかけ外部評価者を使って調べることは、希有の試みである。飯島氏は「薬局サービスは1軒だけが良くても、1軒だけがダメでも地域医療の質は変わらない」が持論だ。顧客満足度調査を会員が閲覧し、地域に公表することで、会員一人ひとりが医療人・医療提供施設としての自覚を持つことが大切だと述べている。

上田単独の認定基準薬局制度を立ち上げる

 そして"薬局の質の担保"を象徴する事業が、2015年に開始された上田薬剤師会認定基準薬局制度である。同年、日本薬剤師会の基準薬局制度は発展的解消したが、上田ではその理念を継承、地域住民目線の薬局群を作り上げるために独自の基準薬局制度を定めた。基準項目は日薬版を踏まえつつ、「複数薬剤師が勤務していることが望ましい」「プライバシーに配慮したカウンター等を設置し対面販売を行っている」などの新項目を追加。日薬版にもあった「地域住民のセルフメディケーション支援」の項目は、「一般用医薬品等」が「すべてのカテゴリーの医薬品、介護用品、衛生材料、医療機器等を200品目以上」に直された(表2)。訂正項目や新規項目からは、上田薬剤師会が健康サポート薬局やかかりつけ薬剤師と言った、最近のニーズを見据えた薬局作りを志向していることが明確になる。

表2 上田薬剤師会認定基準薬局の認定基準項目

 全34項目について評価を行い、100点満点で70点以上を獲得した薬局は基準を満たしたとする。2017年4月までに3回の認定審議会が開かれ、会員薬局89薬局中、67薬局が認定された。そして、認定を受けたら終わりではなく、時代の流れや住民ニーズに合わせて薬局をカスタマイズしていくことを重視している。そのため、認定は更新制で、認定項目も2年ごとに改定される。また、審議会には地域住民も加わっており、住民のニーズを反映することを目指している。

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