認知症サポーター養成講座・認知症ケアレベルアップ研修会に参加して

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

八柳 秀夫(イイジマ薬局)

 「認知症の方を地域で支えよう」「そのためのボランティアを地域で養成していこう」。今、全国でこうした取り組みが広がりつつありますが、上田市では特定NPO法人"新田の風"と上田薬剤師会の共催で、認知症サポーター養成講座と認知症ケアレベルアップ研修会を行っています。こちらに参加しましたので、報告します。

 認知症サポーター養成講座は90分間の講義です。この講座は薬剤師だけが対象ではなく、ケアマネや訪問看護師、そして何より多くの地元住民の参加を募っています。講師はアザレアンさなだ常務理事・総合施設長で、"新田の風"の理事でもある宮島渡さん。宮島さんは老人福祉施設に長年関わり、認知症のケアや介護に詳しく、全国で講演している著名な方です(表1)。

 講座からは、2015年に60人、16年に40人のサポーターが誕生しました。また、この講座は認知症の人に対する子どもたちの理解を高めるため、地域の小学校や中学校でも開催されました(写真)。2015年には、小学5年生84人、中学2年生131人、3年生155人が受講したそうです。

認知症養成サポーター講座 講座風景(北小学校)

 ただ、一度きりの講義ではどうしても全般的な話にとどまり、実践的な技能を学ぶことはできませんでした。そこで、宮島氏や "新田の風"認知症対策チームによって企画されたのが、認知症ケアレベルアップ研修会でした。

 この研修会は、養成講座を終了した認知症サポーターを対象としたもので、90分(2015年度は3時間)の講義×4回と、"新田の家"における実習、徘徊者声掛け訓練の計6回のコースです。4回の講義は、以下のテーマで行われました(表2)。

  1. 認知症の原因疾患と症状について、基本的な知識を学ぶ 
  2. 認知症の人がどのように世界をとらえているか、また、どんな気持ちかを理解する 
  3. 認知症の人とのコミュニケーション方法について学ぶ 
  4. 認知症の人から困っていること、分かってほしいことなど、実際の要望を聴く

 その後、"新田の家"で、認知症の人の話し相手になる実習を受けました。さらに、認知症の人に扮したメンバーが地域内を徘徊し、受講者たちが捜索・発見・保護するという模擬訓練もやりました。

 実際に受講してみると、認知症についての知識は学んだが、では実際に声を掛けるとなると、どんな言葉を使えばいいか分からず、言葉に詰まる場面がありました。その点で、この研修会での実習は認知症について思考を深める貴重な経験になりました。また、ここで得られた経験や知識は薬局業務にも役立ちました。

 認知症の人は症状が進行した状態での受診が多いのですが、薬剤師・薬局の役割の1つとして認知症の早期発見が期待されています。本研修に参加して、早期発見つまり「気づき」の部分において、認知症と疑われる言動やポイントを学ぶことができました。認知症の人の行動原理を理解できれば、自ずとどう応対したらいいかもわかります。そして、認知症の人の家族に対しても、生活面での工夫などを伝えられるようになりました。

 地域住民参加型の講座や研修会には、地域住民と顔見知りになるという付随的効果があります。薬局で接するときと違い、講座では地域住民の表情が豊かで、口数が多いことに驚きました。同じ受講者としてフラットな関係だからこそ、築ける信頼関係があるように感じます。薬剤師が地域活動に参加する意義は、地域住民から気軽に相談してもらえる信頼づくりだと思います。そういった信頼が、住民から選ばれる"かかりつけ薬剤師・薬局"にもつながるのではないでしょうか。

 上田薬剤師会の飯島会長は、地域包括ケアシステムの構築について「地元のみんなで困った人を見守り、支え合い、助け合い、その地元住民と自治体、医療や介護の専門家が顔の見える関係となるまちづくり」と捉えています。地域全体で認知症の人を支えようという、認知症サポーター養成講座、認知症ケアレベルアップ研修会の取り組みは、まさにその好例だと考えています。

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