ロコモとフレイルの関係は仮想通貨の為替?

LIFE研究の二次解析結果から

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:概念を提示したら検証するのがサイエンスのルール

 日本整形外科学会の「ロコモティブシンドローム」と同様に高齢者の健康寿命の延伸を目指したスローガンに、日本老年医学会の「フレイル」がある。こちらは、ガラパゴス「ロコモ」と違って、「frailty」という名称で国際的にも認知されている。

「スローガン」などと呼ぶと、どこかの国の軍事パレードを彷彿とさせて、またまた関係各所から貴重なご進言をいただくかもしれないので、差し障りなく「言葉・コピー」と呼ぶことにする。これなら命名プライオリティをゲットした先生たちが、罪悪感に苛まれることも少ないだろう。また、国民の健康維持のために言葉・コピーの介在が必要か否かについて議論するつもりもない。というか、もう両方ともできてしまっていて、学会も行政も一部の医療現場も、目を瞑ったまま突っ走っている。現状は、「ロコモやフレイルという言葉・コピーが国民の健康維持に有益である」という概念(コンセプト)について議論する段階と考える。

 サイエンスのルールとして、概念を提示した場合には、学術的エビデンスに基づいた「概念の実証(proof of concept;POC)」が必須である。当然、言葉・コピーの認知度向上は、POCが公正と結論されてから初めて進むべきステップである。ましてや、認知度向上のために、国民の税金を含む資金の多くを、広告代理店への支出に充填するなどは論外である。

 しかしながら、その点はさすがにフレイルである。広告代理店を使った認知度向上などは考えないで、高レベルの学術的エビデンスの地道な積み重ねによって、一歩一歩、POCを前進させている。今回取り上げる論文は、その1つに位置付けられる(Ann Intern Med 2018;168:309-316)。

川口 浩(かわぐち ひろし)

1985年、東京大学医学部医学科卒業。同大学整形外科助手、講師を経て2004年に助教授(2007年から准教授)。2013年、独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)東京新宿メディカルセンター脊椎脊髄センター・センター長。臨床の専門は脊椎外科、基礎研究の専門は骨・軟骨の分子生物学で、臨床応用を目指した先端研究に従事している。Peer-reviewed英文原著論文全299編(総計impactfactor=1,506:2017年11月14日現在)。2009年、米国整形外科学会(AAOS)の最高賞Kappa DeltaAwardをアジアで初めて受賞。2011年、米国骨代謝学会(ASBMR)のトランスレーショナルリサーチ最高賞Lawrence G.Raisz Award受賞。座右の銘は「寄らば大樹の陰」「長いものには巻かれろ」。したがって、日本の整形外科の「大樹」も「長いもの」も、公正で厳然としたものであることを願っている。

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