薬剤師の倫理的な判断に必要な5つの視点

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

シップヘルスケアファーマシー東日本株式会社
川村 和美

患者さんの望みに応えるか、医師の指示に従うべきか...。どのように判断したら適切なのだろうとモヤモヤしたことはありませんか?

とりわけ、"倫理的判断"に迷う場面においては、直感に基づく判断に頼らず、そのケースをさまざまな側面から幅広く検討し、より望ましい決定をするというプロセスが重要になります。ここでは、ケース分析を行う上で大切な5つの視点を説明します。

倫理的な判断に必要な5つの視点とは?

薬学的な視点

薬剤師は、専門性を発揮する上で圧倒的な薬学的知識を持っていることは大前提です。薬学的な視点なくして、患者の最善の薬物治療を判断することはできません。最適な薬剤選択ができているか、薬剤の効果と副作用のバランスはどうか、保険適応の可否はどうか、薬価の負担はどうかなど、多方面から考える必要があります。

患者さんの視点

患者のための医療を実践するために、患者の意向を正確に理解し、どこまでそのニーズに応えていくのか、見極めることが重要です。各医療従事者が患者に接し、それぞれに患者の意向に触れるわけですから、その断片的な情報をつなぎ合わせ、共有することが、患者の意向により沿えることになります。

関係者の視点

臨床の現場では、多くの関係者が患者のケアに関わります。そして、それぞれおかれた立場や考え方の違いによって、さまざまな問題が発生します。家族も含めた関係者の気持ちや、各々の目線から物事を考えてみるということは、チーム医療を進める上で欠かせません。それぞれの価値観を尊重しながら、関係者全員が受け入れられる判断を目指しましょう。

状況の視点

医療資源は限られています。費用はもちろんのこと、かけられるマンパワーにも限界があります。その配分をどうすべきかという視点は、医療を提供する上で忘れてはなりません。守秘義務、経済的側面や家庭の状況、法律、慣習、宗教・文化や公衆衛生、環境など、患者のおかれた状況についても考慮する必要があります。

QOLの視点

かつて健康の測定指標であったQOLは、先端医療技術の進展によって、"生活の質"に留まらなくなってきました。人間の生命の始期や終末が不明確になっている現在では、QOLは「生きることの質」、どう生きるかどう死ぬかといった「生命の質」や「人生の質」と言ったように、生命倫理の観点から限りなく広がっています。患者の価値観から、どうすることが望ましいのか、丁寧に考えなければならないでしょう。

5つの視点を使ったトレーニングで倫理的な判断力を磨く

臨床上の判断力は、トレーニングにより向上することができます。

具体的なケースを想定して繰り返し検討する方法は、多くの人が取り組みやすいでしょう。その結果、臨床上の倫理的な問題に気づきやすくなり、その問題への対応を自分なりに考えられるようになります。

今後の連載で、様々なケースを出題していきます。5つの視点から皆さんも大いにトレーニングしてみてください。

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