認知機能が低下した服薬1日5回の男性④ あなたはどう考える? 薬剤師の在宅ケーススタディ vol.2 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする 出題者から メディスンショップ蘇我薬局 雜賀 匡史さん 服用数量を減らし、社会資源のサポートを活用 在宅患者を支える上では、生活面を見ながら医療的なケアを考えていくという思考が非常に大事です。ですから、病院とは違って、服薬支援が必ずしも医療的に理想通りにいかない場合もあります。その中で、今できる治療を考えることが、在宅訪問を担う薬剤師に求められるスキルだと思います。 例えば、処方されている糖尿病治療薬について。食直前という用法は、認知症の人に限らず忘れてしまうケースが多いです。1日3回の服用なので、1日1回服用の薬と比較すると、単純計算で3倍の服用間違いが起こりうることになります。 また、グリメピリドのような低血糖を起こしやすいSU薬は、認知症の人ではいっそうの注意が必要です。認知症の人は食事したかどうかを忘れてしまうことがあり、食事を取ったつもりでSU薬を服用すると、低血糖を引き起こしてしまうかもしれません。 ではどのように対応するのか? 薬を1人で管理することが難しい場合は、社会資源を最大限に利用するとよいと思います。医療保険制度や介護保険制度を使った公的な社会資源(フォーマルな社会資源)だけでなく、ご近所さんによる見守りや、服薬時間に宅配のお弁当サービスを頼んで声がけしてもらうなど、身近な方の厚意という社会資源(インフォーマルな社会資源)も活用し、みんなで協力してBさんを支える方法が考えられます。ただ、インフォーマルな資源は支援者を柔軟に増やせるというメリットがありますが、あくまでも厚意によるものなので、甘え過ぎずに無理なく継続できるようにすることが重要です。 もう1つの方法は処方提案です。Bさんの場合、毎朝ヘルパー訪問があり、ヘルパーさんに服薬介助をお願いできる可能性があります。しかし、1日5回のうち1回だけ服薬介助してもらっても、残りの4回飲めなくては意味がありません。そこで、1日1回の処方に変更してもらうことを考えます。医師に処方提案するときには、生活と医療の両面から考えます。生活面では、1日1回朝食後の服用ができる薬剤。医療面では、食事の摂取にかかわらず低血糖を起こしにくい薬剤。この2点から、糖尿病治療薬は、1日1回の服用でよいDDP-4阻害薬などが有効だと考えられます。ただし、血液検査で血糖やHbA1cが高値だからといって、いきなり高用量から開始しないことです。飲み忘れによるものかもしれないので、段階的に検査値を観察し、低用量から開始していくとよいと思います。 同様に、アムロジピンベシル酸塩やアトルバスタチンに関しても、血圧や血清コレステロール高値の理由が飲み忘れによるものかもしれないので、これらの用量にも注意が必要です。血圧はバイタルを取ればすぐに分かるので、訪問の際に血圧測定を行い、こまめな用量調節に役立てることが可能だと思います。アトルバスタチンについては、血液検査をしなければ服薬の影響が分からない部分がありますが、年齢に鑑みて中止するのも1つの案だと思います。 中止できないようであれば、用法を夕食後から朝食後に変更するだけで、全ての薬を1日1回朝食後にまとめることができます。さらにアムロジピンベシル酸塩とアトルバスタチンの合剤を使えば、1錠減らせます。錠数や服用量を減らすということは、嚥下機能が衰えてきた高齢者の服薬を考える上で重要なポイントです。このような内容で処方提案し、ヘルパーさんに服薬介助をお願いすれば、毎日きちんと服用できるようになるでしょう。 前の記事:私たちはこう考える ・・・ 在宅アドバイザープロフィール 有限会社丸山薬局 大石 和美さん 父の介護がきっかけで在宅に本格的に関わる。自分も地域の一員であることを忘れず、その人の生き方を邪魔しないプロフェッショナルであろうと心がけている。在宅歴25年、月平均の在宅訪問件数約50件(算定はそのうち約半分) プラス薬局高崎吉井店 小黒 佳代子さん 患者さんのもっと近くで薬剤師として働きたい、患者に寄り添いたいという思いから在宅を始める。在宅歴10年、月平均の在宅訪問件数約100件 メディスンショップ蘇我薬局 雜賀 匡史さん 在宅訪問を実施している薬局に就職し、医療だけにフォーカスを当てて患者に接するのではなく、生活の一部としての医療を考えることのできる薬剤師を目指している。在宅歴約10年、月平均の在宅訪問件数約80件 ファーマライズ株式会社 ひまわり薬局 佐藤 一生さん モットーは「人は、在宅医療を通じて幸せになれる」。在宅歴11年、月平均の在宅訪問件数約40件(個人宅30件、施設10件) 有限会社フクチ薬局 佐藤 香さん 体調が悪化して来局できなくなった患者に会うために、薬を自宅に届けたことから、在宅の道へ。利用者、家族それぞれの生活とキャラクターを理解し、ニーズに合った医療の提供を心がけている。在宅歴9年、月平均の在宅訪問件数8件(個人宅7件、施設1件) 有限会社フクチ薬局 福地 昌之さん 在宅総合診療を行っていた医師からの依頼で、患者宅へ薬を届ける形で在宅をスタート。在宅では、いかに過ごしやすい日々を送れるかを重視して対応している。在宅歴23年、月平均の在宅訪問件数約35件 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×