医療人としての志と会社の方針が異なる 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ウィズサポ/株式会社ジョヴィ川村 和美 患者さんの望みに応えるか、医師の指示に従うべきか...。どのような判断が適切なのだろうとモヤモヤしたことはありませんか? とりわけ、"倫理的判断"に迷う場面においては、直感に基づく判断をせず、そのケースをさまざまな側面から幅広く検討し、より望ましい決定をするというプロセスが重要になります。 今回は、効率を重視する就職先の経営方針に、自分が理想としていた薬剤師像とのギャップを感じたケースです。 このケースの詳しい状況説明や、薬剤師が倫理的に判断するために必要な5つの視点からの解説はこちらに掲載しています。※(関連記事)「こんなの私が望んでいた医療従事者じゃない」 それぞれの対応は望ましい? このケースを考える上で大切な、5つの視点から解説していきます。 上司に何と言われようが十分な服薬支援時間を取り、推奨販売品には惑わされないといったように、自分が薬剤師として思い描くやり方を貫く。 この方法は、上司の視点、関係者の視点、状況の視点がないようです。管理薬剤師は若い頃、待ち時間でひどく怒られた経験があり、その後の関係性の構築にひどく苦労をして、新人にそんな嫌な思いはさせたくないと考えているのかもしれません。エリアマネージャーは、効率的な業務を推進して残業をなくすことが、自分にできる重要な使命であり、勤務者にとって最も健全な方法だと考えているのかもしれません。自分の価値観のみに偏らず、なぜそういった指示を出すのか、上司の気持ちや会社の方針に目を向けてみることも必要です。「推奨品には惑わされない」という価値観が強い場合、推奨品がニーズと最も合っている顧客も、見えなくなってしまうかもしれません。 管理薬剤師やエリアマネージャーに、効率化ばかり考えているのは医療者として間違っていると思う旨を訴えてみる。 業務に疑問を感じたとき早めに上司に相談してみるという行動は、よい方法です。Aで考えてみたように、上司の視点、QOLの視点を幅広く想像し、自分の価値観を少し脇において相談してみることが必要です。伝え方によっては、「管理薬剤師やエリアマネージャーは効率化ばかり考えている」と決めつけているように受け取られたり、批判的に聞こえることがあるかもしれませんので、相手のおかれた立場を配慮した上で、訊ねる姿勢を心掛けましょう。 もう少し業務に慣れてきたら、それなりに自分が采配を振れる業務も広がってくるかもしれないので、いまは静かに指示に従って数年待ってみる。 この方法は薬学的な視点、状況の視点、QOLの視点が足りないと思います。疑問を抱きながらも十分な服薬支援をせず、薬を配達しているだけの在宅訪問を続けていれば、患者には「薬局の仕事はこの程度のものだ」という認識が定着しますし、薬剤師自身も"慣れ"によって「この程度の働きでいい」と考えてしまう危険性があります。どんなに疑問を抱いても、解決する努力をしなければなにも変わらないでしょう。 加えて数年待ってみても、采配できる立場になれない可能性があることも、考えておいた方がいいでしょう。 組織の中でうまくやっていくには、組織の方針に従わなければならないと思うので、いずれの指示にも従うしかないと割り切って仕事する。 この方法は、薬学的な視点が完全に欠落しています。上司に言われた通りに業務をこなすことに徹していたら、それは仕事ではなく単に作業をしているに過ぎず、代替可能性が極めて高くなります(その仕事をするのは、あなたに限らず誰でもよいということ)。指示に従っていればいいのですから、感性や判断力は鈍麻し、自分自身の行動に責任を持つという気持ちも薄いでいくでしょう。それで職業人としての存在意義を感じられるでしょうか。薬剤師のアイデンティティは保持できるのでしょうか。薬剤師を志した想いや医療人としての気概を、自分自身で打ち消してしまう選択肢だと思います。 この会社では自分の理想とする仕事はできないし、波風を立てるのも嫌なので、自分が働きたい職場を探して転職活動を開始する。 この方法は、すべての視点を持てていません。パワハラや雇用条件の問題など、転職が必要な場合があることも確かです。ただ、今回のケースでは、転職を考える前に現所属先で何らかのアクションを起こすことが先だと思います。 薬剤師の売り手市場感が強く、転職先なんてどこでもあると感じられる今はいいのですが、需給率予測を見れば、薬剤師数が徐々に飽和状態となり、今後、雇用先が狭まったり、雇用条件が悪くなることは必至です。転職という選択肢を選んだところで、そうも簡単に望む職場が見つかるとは思えませんし、問題解決の手を打たないというスタイルでは同じ繰り返しになる危険性が高いと思います。最終的に、大変な思いをするのは自分です。 望まれる対応は? 本ケースでは、所属先の決められた枠組みの中で、自分が望ましいと思う方法を実現するには、どうしたらいいかという考え方ができるかどうかがポイントです。 多くの国民は薬剤師の提供するサービスを享受したという経験がなく、その結果、スピードに価値を置く現状があるのです。それぞれの薬剤師がいますぐ薬剤師の介入によるメリットを提供し、この認識を覆さなければならない窮地にあります。 スピードを維持しつつも、前回来局時の情報を十分に把握したうえで速やかに新たな情報収集をして、患者が「よかった」と感じられるような適切なアドバイスや注意喚起を迅速に実施するしかありません。満足のいく対応を繰り返していったとき、患者側に「時間がかかってもあの薬剤師と話がしたい」、「時間をかけて薬剤師に相談したい」という新たな価値観が構築できるかもしれませんし、管理薬剤師やエリアマネージャーにその声が届いたなら、服薬支援時間を重視してくれるかもしれません。 うまくいかないときは、自分の価値観を少し脇において、上司に相談したり、上司の意見を聞いてみることも必要ですし、推奨販売品の販売などで生まれた利益を会社はどういうことに使ってきたのか、今後使おうとしているのか、というCSR(corporate social responsibility)的な話も知っておくとよいと思います。こうした対応力を買われて、早くから在宅担当者に抜擢されるチャンスも生まれるかもしれません。それは、理想とする、やりがいのある職場を自分自身で生み出すことになるでしょう。 利益を出すことは悪ではありませんし、決して間違った行為ではありません。企業や事業体が利益を上げられなければ、法人税を始めとする税金が支払われなくなり、国は破綻してしまいます。民主主義社会において、企業や事業体が儲けることは極めて重要なのです。 経営をしていく上で、利益を確保することができれば、新しい取り組みに投資することができるようになります。たとえば、このケースでは推奨販売品の利益で、各地区へのクリーンベンチの設置や、薬剤師教育に投資するという経営方針を有していれば、より高い医療サービスの提供を実現することができるでしょう。 3対応策のアイデア3 薬を出すスピードを維持しつつ、患者が「よかった」と感じるアドバイスや注意喚起を迅速に実施する自分の価値観を少し脇において、上司に相談したり、上司の意見を聞いてみる利益が事業活動にどう使われているのか知ることも必要自分の置かれた環境で、課題解決のための創意工夫をする 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×