"Don't stay home!"と言わねばならない患者さんもいる 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする 獨協医科大学埼玉医療センター こころの診療科井原 裕 Illustration:kazuto hashimoto このコラムでは、適度な運動がもたらす健康効果を何度も強調してきました。高齢化の時代にあって、薬剤師の皆さんが出会う人の多くは高齢者です。会社勤め、子育てなどの人生の大きな事業を成し遂げて、充実したシニアライフを送りながらも、一方で持病を抱えて老・病・死の不安を抱き、人生の宿命に立ち向かいつつ日々を過ごしている人々です。その中には、病院に通い、薬局に薬を受け取りに行くことが数少ない日課の1つになっているような人もいます。お薬の説明をする機会に、運動習慣についてぜひともお尋ねください。 このたび『英国スポーツ医学雑誌』に掲載された論文(Br J Sports Med 2021年4月13日オンライン版)では、「身体の不活発は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスクを高める。4万8,440人の成人を対象とした研究」と題されていました。 この調査研究は、2020年1〜10月にCOVID-19と診断された4万8,440人を対象に、運動習慣とCOVID-19との関係を調べたものです。まず、米国保健福祉省(HHS)が出したガイドライン(中等度の運動を週に150〜300分など)に準拠して、感染に先立つ2年間にわたる運動習慣を以下の3群に分類しました。全く運動しない群(6,984人)、ガイドラインの基準に達しない程度の運動群(3万8,338人)、ガイドラインに合致した運動群(3,118人)です。 検討の結果、全く運動しない群では、ガイドラインに合致した運動群に比べ、入院するリスクが2.26倍、集中治療室(ICU)に入室するリスクが1.73倍、死亡リスクが2.49倍であることが確認されました。 一方で、ガイドラインの基準に達しない程度の運動群では、全く運動しない群に比べ、入院、ICU、死亡の3指標のリスクがいずれも低いことが示されました。不定期であれ、運動を行うことはリスクを低下させるのです。 私は、政府、とりわけ東京都の小池百合子知事らが「ステイ・ホーム!」を強調し過ぎている点に、プライマリケアの観点から不安を感じます。以前から、「高齢者がステイ・ホームした結果、コロナでは死ななかったが寝たきりになった」という結果を招かないか心配していました。その上、「ステイ・ホームして体力が弱ったところに、コロナにかかってコロッと死んだ」という事態に陥る可能性も心配する必要がありそうです。 健康維持を目的とする運動は、決して「不要・不急」に当たりません。運動には、体力を上げ、免疫力を高め、COVID-19に対する抵抗力を高める可能性があります。 路上の集団飲酒や某省庁の大宴会こそ厳しく指弾すべきですが、高齢者の健康のためのウォーキングなどは、取り締まる必要は全くありません。 薬剤師の皆さまには、シニア世代の患者さんに対して「3密を避けさえすれば、屋外の散歩などは差し支えない」とぜひお伝えいただきたいと考えています。 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×