再発・転移頭頸部扁平上皮がん、新規治療の探索

未治療例におけるTPEx vs. EXTREMEの第Ⅱ相RCT

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研究の背景:切除不能再発転移頭頸部扁平上皮がんに対する初回薬物療法の現状

 EXTREMEレジメン〔プラチナ(Pt)製剤、フルオロウラシル(5-FU)、セツキシマブ(Cmab)を最大6サイクル行い、その後weekly Cmabの維持療法〕は、再発または転移性頭頸部扁平上皮がん(R/M HNSCC)患者に対する第一選択の1つである(Engl J Med 2008; 359: 1116-1127)。しかし、奏効率や生存率はいまだ満足できるものではなく、かつ副反応も少なからず見られるため、治療成績の改善やQuality of survival(QOS)の観点からも新しい治療法の開発研究が続けられている。

 また、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の登場により、ペムブロリズマブ(Pembro)単独またはPembro+Pt製剤+5FUの併用療法もR/M HNSCC患者に対してファーストラインで用いられるようになってきた。化学療法歴のないR/M HNSCC患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験KEYNOTE-048では、EXTREME療法と比較して、Pembro+Pt製剤+5-FU併用療法の優位性〔ハザード比(HR)0.77、P=0.0034〕あるいはPembro単独投与の非劣性(同0.83、P=0.0199)が示されている(Lancet 2019; 394: 1915-1928)。しかし、Pembroの最適使用推進ガイドラインでは、「PD-L1発現率(CPS)により有効性が異なる傾向が示唆される結果が得られていることから、CPSも確認した上で本剤投与の可否を判断することが望ましい。CPSが1%未満であることが確認された患者においては、本剤以外の治療選択肢も考慮する」とあり、このような患者ではEXREMEレジメンが考慮される。

 一方、タキサン系薬とCmabの相乗効果を示唆する前臨床データに基づき、タキサン系薬+Cmab±Pt製剤による治療も有望な抗腫瘍効果が期待されている。わが国においては、単群の第Ⅱ相試験ながらPCE療法〔パクリタキセル(PTX)+カルボプラチン(CBDCA)+Cmabを最大6サイクル行い、その後weekly Cmabの維持療法〕の臨床試験で奏効率40%、全生存期間(OS)14.7カ月、無増悪生存期間(PFS)5.2カ月と良好な成績が示されている(Ann Oncol 2018; 29: 1004-1009)。EXTREME療法より推奨度は低いものの、外来での治療が可能な点など、メリットが大きいことが報告されている。

 このような背景から今回、ドセタキセル(DTX)+シスプラチン(CDDP)+Cmab併用療法を4コース行い、その後2週間ごとにCmab維持療法を行うTPEx療法をEXTREME療法と比較した第Ⅱ相試験の論文(Lancet Oncol 2021; 22: 463-475)を取り上げたい。

山下 拓(やました たく)

北里大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教授。同大学病院副院長(診療担当)および新世紀医療開発センター長を兼務。

1995年、慶應義塾大学医学部卒業。同大学耳鼻咽喉科学助手、栃木県済生会宇都宮病院勤務を経て、2008年、防衛医科大学校耳鼻咽喉科学講師。2009年4月に渡米し、ペンシルベニア大学耳鼻咽喉科研究留学。帰国後、2014年4月、防衛医科大学校耳鼻咽喉科学准教授を経て、2016年2月より現職。

日本耳鼻咽喉科学会認定耳鼻咽喉科専門医・専門研修指導医、日本気管食道科学会認定気管食道科専門医、頭頸部がん専門医制度暫定指導医、日本がん治療認定医。頭頸部腫瘍、気管食道科学、喉頭科学(音声、嚥下)を中心に、耳鼻咽喉科・頭頸部外科学領域の幅広い領域をカバーし、診断治療に当たっている。

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