男性コロナを女性ホルモンで治療!?

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研究の背景:COVID-19では閉経、男性がリスク因子

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発症した女性では、閉経が長期入院の独立したリスク因子であることが示されており、抗ミュラー管ホルモンやエストラジオールが保護的な役割を果たしていると考えられている(Clin Infect Dis 2021; 72: e240-e248)。

 その他、プロゲステロンについては、受容体が免疫細胞に発現しているため、閉経前女性の局所・全身性炎症を制御しているとされている。実際に、A型インフルエンザのマウスモデルでは、外因性にプロゲステロンを投与することで肺の炎症が抑制され、気道の蛋白質漏出が減少し、肺胞上皮細胞の修復が促進されるという報告もある(PLoS Pathog 2016; 12: e1005840)。

 周知の通り、COVID-19おいては男性の方が女性よりも予後不良である。そのため、COVID-19で入院した低酸素血症がある男性患者を対象に、「プロゲステロンの皮下投与を行うことで、臨床アウトカムが改善するのではないか」という仮説を立て、検証したのが今回取り上げる研究である(Chest 2021; 160: 74-84)。

 どこぞの怪しい医学ジャーナルではなく、呼吸器科領域のトップジャーナルに掲載されている点は特筆すべきであろう。

倉原 優 (くらはら ゆう)

国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科医師。2006年、滋賀医科大学卒業。洛和会音羽病院での初期研修を修了後、2008年から現職。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本感染症学会感染症専門医、インフェクションコントロールドクター、音楽療法士。自身のブログで論文の和訳やエッセイを執筆(ブログ「呼吸器内科医」)。著書に『呼吸器の薬の考え方、使い方』、『COPDの教科書』、『気管支喘息バイブル』、『ねころんで読める呼吸』シリーズ、『本当にあった医学論文』シリーズ、『ポケット呼吸器診療』(毎年改訂)など。

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