コロナ感染は精液所見を悪化させるか?

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:感染症が原因の不妊症もある

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の後遺症が多数報告されているが、SARS-CoV-2は精子に影響を与えるのだろうか?感染症(特に生殖器や骨盤に感染が起こる性感染症)は不妊症を引き起こす可能性がある。有名なものとして女性の性器クラミジア感染は、子宮頸管炎から卵管に広がって炎症や癒着を起こすと、卵管性の不妊症、子宮外妊娠を引き起こす原因となりうる。

 あまり知られていないかもしれないが、男性も同様に感染症が原因で不妊症になることが分かっている。例えば、以前から男性に性器クラミジア感染が起こると、精液のパラメータ(精子濃度や精子運動率)を悪化させることが知られていた。

 近年の研究では、尿道や前立腺、精巣上体といった精路の感染ではなく、精巣に直接クラミジア感染が起こることにより、造精機能が低下して無精子症の原因となりうることが分かっている。(Bryan ER, et al. Detection of chlamydia infection within human testicular biopsies. Hum Reprod 2019; 34: 1891-1898

 クラミジアのような性器感染症だけでなく、ムンプスウイルスのような全身に起こるウイルス感染症も精子所見を不可逆的に悪化させることは有名である。ただし、ムンプスウイルスによる精子所見悪化は精巣炎が原因である。では、流行中のSARS-CoV-2は造精機能に影響を与えるのだろうか?

 今回紹介するのは、以下の論文である。

Donders GGG, et al. Sperm quality and absence of SARS-CoV-2 RNA in semen after COVID-19 infection: a prospective, observational study and validation of the Sperm COVID test. Fertil Steril 2022; 117: 287-296.

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