結核の標準治療がさらに短縮化?

4カ月治療レジメンの扉開く

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:2年に及んだ結核の治療期間、現在は6カ月が標準

 正岡子規は1902(明治35)年に結核で亡くなるが、そのときの病状は『病牀六尺』という本にまとまっている。この本は、以下の俳句で終わっている。

 俳病の 夢みるならんほとゝぎす 拷問などに誰がかけたか 

 ホトトギスは血を吐くまで鳴き続ける鳥であるということから、肺結核と脊椎カリエスで床に臥せっていた正岡自身をそれに重ねたものと思われる。なお、「子規」もホトトギスという意味であることはよく知られている。

 結核治療は、1950年代にイソニアジドが結核菌に効果があると分かった後、ストレプトマイシンやパラアミノサリチル酸を加えることで、70~95%の治癒率が見込めると報告された。しかし、当時の治療は最長2年に及ぶ長いものであった。開発途上国では、治療期間が長期になればなるほど、服薬アドヒアランス不良例や脱落例が多くなることから、治療の短縮化が課題とされた。

 イソニアジド(H)とリファンピシン(R)をキードラッグとして、初期にピラジナミド(Z)やストレプトマイシン(S)、あるいはエタンブトール(E)を加えることで、6カ月まで治療期間を短縮できる今のレジメンになったのは、1982年の試験に基づいている。これは「2HREZ+4HRあるいは2HRSZ+4HR」のレジメンと、「2HRE+7HR」の9カ月のレジメンを比較したものである。いずれの群においても、結核再発率は同等という結果が得られた(Am Rev Respir Dis 1982; 126: 460-462)。

 Zを含まない9カ月のレジメンとZを含めた短期6カ月のレジメンを比較した試験では、6カ月の治療によって早期に菌消失が確認され(治療16週時で94.6% vs. 89.9%、率差4.7%、95%CI 0.7~8.7%)、治療完遂率も高いものだった(61.4% vs. 50.6%)。また、治療後の結核再発率は同等で、Zを含めた6カ月治療が有効であることが再確認された(Ann Intern Med 1990; 112: 397-406)。

 Zを長期に投与すればさらに短縮できる可能性も考えられたが、Zは初期の2カ月を超えて使用する臨床的意義がないことが分かった。2、4、6カ月の投与によって、結核の再発率に差が見られなかったことが理由である(Am Rev Respir Dis 1991; 143: 700-706)。

 今回は小児結核において、4カ月治療レジメンの扉を開けた臨床試験結果を紹介したい(N Engl J Med 2022 ; 386: 911-922)。

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