早漏は世界の2割の男性を悩ませる「疾患」

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研究の背景:早漏は疾患だということを知っていますか?

 最初にお断りしておくが、早漏は性生活に悪影響を及ぼす立派な疾患である。性機能障害の中でも、早漏は勃起障害(ED)の次に患者数が多い。

「早漏:premature ejaculation」でPubMedを検索すると、原稿を記載している今年(2022年)4月時点で2,053本の論文がヒットする。この数は、早漏以外の射精障害である「逆行性射精:retrograde ejaculation」が1,032本、「遅漏:delayed ejaculation」が744本の論文しかないのに比較して、約2~2.8倍と圧倒的に多い。 これは単純に、世界中で早漏に悩んでいる人がとても多いことが関係している。

おさらい:早漏とはどういう疾患なのか?

 早漏の定義は幾つかあるが、『国際性機能学会のガイドライン』では、「挿入後1分以内に射精してしまう状態」、または「男女ともに満足できるまで挿入時間がコントロールできない状態」とされている。「それなら、2時間挿入しないと満足してくれない女性とセックスする際には、全員早漏になってしまうではないか」とのご意見をいただくかもしれないが、そこは常識的に判断していただきたい。

 重要な問題は、早漏が原因となり性生活を避けようとし、人間関係や日常生活、心理状態にまで支障を来す可能性があるということである。米国の報告では、18~59歳の男性の21%が早漏であると報告されている(『米国泌尿器科学会早漏治療ガイドライン』)。また、日本国内の一般人に行われたインターネットアンケートでも、40%近くの男性は自分が早漏であると感じていることが報告されている。

早漏の治療は薬物療法が効果的

 日本国内では、厚生労働省から正式に承認を受けている早漏の治療薬がないために、「早漏を治療することができる」という事実は一般的に知られていない。しかし、海外では早漏という病態自体が一般的に認知されており、米国や欧州の泌尿器科学会や、国際性機能学会では、それぞれの早漏治療ガイドラインを策定している。 先に示した海外のガイドラインでは、以下の治療法が推奨されている。

  1. 薬物療法
  2. 行動療法
  3. 精神的治療

 最も代表的な治療は薬物療法である。

 射精は脳内でコントロールされており、神経伝達物質であるセロトニンが重要な働きを担っている。簡単に説明すると、セロトニンは抑制系の神経伝達物質であるので、脳内の「射精をする」という命令をコントロールして、射精を我慢することができるようになるのだ。しかし、セロトニンが不足すると射精のコントロールができなくなってしまうため、期待するよりも短い時間で射精してしまう。

 ちなみに、早漏の治療薬として世界50カ国以上で唯一認可されているdapoxetineという薬がある。同薬は早漏の治療薬としては第一選択と考えられるが、日本国内では認可されていない。そもそも、日本人はセックス回数が少ないために、市場としてニーズが小さいために製薬会社が積極的に動かなかったのが原因であろうか。早漏に効くメカニズムとしては、dapoxetineは選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の1種であり、脳内のセロトニンの働きを増強させることにより、射精までの時間を3~5倍に延長させることができるようになる。

 日本国内で有名なSSRIとして、皆さまご存じのパロキセチン(商品名パキシル)もその副反応を用いて射精までの時間を延長させることが知られている。しかし、dapoxetineの方が即効性があり、代謝が速く、副作用が少ない点が評価されており、早漏に対するオンデマンド治療に有効であることが6,000人を超えるランダム化比較試験(RCT)で示されている。

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