〔JAMA総説〕GERDは重大問題!胃炎、消化不良と混同するな!

つけたり:夏目漱石修善寺大患、日本書紀大化改新、新生児の嘔吐、胃内視鏡歴史

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 今まで胃食道逆流症(GERD)というと小生、PPI(proton pump inhibitor)を処方してそこで完全思考停止、おしまいでした。

 2020年12月のJAMAにこの総説があったのですが「わざわざ取り上げる程の疾患かいな?」と積読(つんどく)になっておりました。しかしこの総説によると「GERDは重大な問題なのであり胃炎や消化不良と混同するな! Barrett食道(食道扁平上皮が胃粘膜と同じように円柱上皮化)の1.73%ががん化する!」というので、小心者の小生は俄かに心配になり、まとめてみました。

 JAMA総説「胃食道逆流症」総説の最重要点は次の14点です。

  1. 症状:胸焼け、酸逆流、胸痛! 時に嚥下困難、出血、咳嗽、喘息、喉頭炎、嗄声、虫歯、ゲップ、鼓腹
  2. 発症リスクは肥満(腹圧↑)、喫煙(食道クリアランス↓)、遺伝31~43%。減量・禁煙を
  3. H. pyloriは胃粘膜萎縮→酸減少→GERD予防。除菌で逆流性食道炎リスク↑
  4. GERDは重大問題! 胃炎、消化不良と混同するな! バレットで1.73%がん化! 定期内視鏡を
  5. 新生児の5割は食道逆流、嘔吐あり9割は1歳で改善、以後漸増、高齢者では多い
  6. GERD確定はびらん性食道炎Grade C・D、Barrett、食道狭窄、pHモニターで酸曝露>6%時
  7. 食道炎→要長期PPI、必要最小量で。線維性狭窄ではバルーン拡大で80%軽快
  8. Barrett食道→1.73%腺がんに:5年生存<20%、PPIで腺がんは防げない
  9. 減量、禁煙、頭側挙上、夜遅くの食事禁、アルコール/スパイシー食/チョコ避ける。アルカリ水、地中海食可
  10. GERDにPPI 4週、食道炎確定なら8週。継続時必要最低量を。再発時pH、内圧を
  11. PPIで改善せぬ時、内視鏡、食道内圧、pH測定→GERD確定ならPPI(パリエット)2回/日に
  12. PPIで肺炎、Clostridium difficile感染増加! PPI必須はICU・呼吸器患者・DAPT時
  13. 長期PPI中止で酸分泌↑、テーパーして中止せよ。アルロイドG有効。ザンタックに発がん性
  14. 手術は鏡視下胃底皺壁形成術が一般的。LINX(磁石)有望かも。EsophyxZ推奨しない

GERDは食道・胃接合部(esophagogastric junction)の機能不全(dysfunction)により酸性の胃内容物が食道に逆流すること」をいいます。 欧米ではGERDは食道がんに進行する可能性のある重要な疾患で、しかも食道がんが急速に増えているというのです。GERDがPPIで反応しない場合、手術までやっています。 GERD手術には腹腔鏡視下胃底皺(すう)壁形成術が一般的ですが、2007年に「Magnetic Sphincter Augmentation(LINX、 Torax Medical Inc)」といってチタン磁石のリングを腹腔鏡視下で取り付けるという手術が出現しました(関連リンク1)。食物が食道に入って食道内圧が高まるとリングが開いて食物が胃内に落ち、磁石でまた閉じるという具合で、なんだか小学生が夏休みの宿題に考えそうな手術です。

 ところが意外にLINXの成績が良く、transoral incisionless fundoplication(EsophyxZ)よりも優れ胃底皺壁形成術に匹敵するというのです。このEsophyxZというのは特殊なGERD専用手術内視鏡で行う手術です。食道から胃に入れた内視鏡を180度反転させるとホッチキスのようになりその間に胃粘膜を引き込んで縫合、噴門部に270度の逆流防止弁をつくるというものです。しかしこの総説ではEsophyxZは推奨しないとのことです。

 内科的治療でPPIはこの総説によると、1日1回で効果がない場合は1日2回に増やすというのですが、国内でPPIが2回まで増量できるのはラベプラゾール(パリエット、10mg、 20mg)だけです。

 難治性の逆流性食道炎に対し2010年より1日2回投与が承認されました。それ以外のPPIは皆1日1回投与です。

 また大変驚いたのはH2受容体拮抗薬のラニチジン(ザンタック)は貯蔵中にカルチノゲンのN-nitrosodimethylamineが増加し米国食品医薬品局(FDA)と欧州医薬品庁(EMA)は販売を禁止したというのです。国内でも2019年10月より各病院により自主回収されています。その他のH2受容体拮抗薬は利用できます。

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