〔NEJM総説〕サル痘の全て

付けたり:北条早雲、猿の惑星、リスのエビフライ、フランコフォニー、独眼竜伊達政宗、江戸時代の盲人、宮城道雄、メコンのモンキー、適々斎塾

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

 2022年5月聞きなれぬ疾患、「サル痘」が突然英国で出現し、瞬く間に欧米諸国に広がりました。一番多いのは米国、次いでブラジル、イタリアです。 今回N Engl J Med2022 Nov 10; 387: 1783-1793)が早くもサル痘(Monkey pox)の総説(Review Article)を組んでくれました。著者はパリと中央アフリカ共和国のパスツール研究所などの医師たちです。N Engl J Medは全世界で問題になる疾患を常に臨床医に分かりやすく届けてくれます。一方、Lancetは疾患だけでなく世界の公衆衛生の動向に重点を置き、二誌住み分けています。

 N Engl J Med「サル痘」総説、最重要点は下記10点です。

  1. ヒトでサル痘は1970年コンゴ初発、 2018年英国で散発、 2022年5月西欧のMSM間でクラスター
  2. サル痘は二重鎖DNAのorthopoxvirus属で天然痘、ワクシニアなどと交叉免疫、天然痘ワクチン有効
  3. 3系統ありClade 1(中央アフリカ)、 Clade 2(西アフリカ、 致死率低い)→ Clade 3(欧米)に進化、軽症
  4. 保有宿主は齧歯類(リス、ネズミ)、中間宿主はサル。アフリカで性感染はまれ。再生産数0.6~1以下
  5. 潜伏期13日、前駆期1~4日(発熱、頭痛、リンパ腫)、発疹期(斑点、丘疹、水疱、膿疱)中心臍窩
  6. 水痘との鑑別点①下顎頸部リンパ腫脹、②全皮膚病変同一ステージ、③手掌・足底にも
  7. 2022年5月英国でサル痘アウトブレーク、 98.5%男性、大半がMSM。アフリカではサル痘の性感染まれ
  8. 今回の異常点:患者数の多さ、旅行歴なし、ヒト‐ヒト性感染が主、発疹が性器/会陰に多い
  9. 今回:潜伏期9.2日、熱/頭痛(71%)、リンパ腫(49%)、発疹(98%)、肛門/性器(71%)、咽頭炎(9%)
  10. 薬はtecovirimat>brincidofovir(いずれも国内未承認)、ワクチンはACAM2000、 MVA-BN

 2022年10月4日現在、サル痘患者2万4,616例のうち男性が98.5%の2万4,235例とひどく不均衡な割合で、しかも男性患者のうち1万300例がMSM(Men who have sex with men:男性間性交渉者)だというのです。アフリカの風土病としてのサル痘ではこれほどの爆発的な増加はなく、また性交渉による感染はまれで、発疹も末梢が多い(centrifugal)のですが欧米では性器、肛門周囲に多く、臨床像が異なるのです。 国内でも2022年10月4日にサル痘患者(発疹、リンパ腫脹)の発生が報告されました。今後、特にMSMのコミュニティーで伝播する可能性があり要注意です。私たちも症状、治療について一通り知っておく必要があります。

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