精神疾患に共通治療戦略、鍵はミトコンドリア

ASDに関する最新研究から

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研究の背景:多くの精神疾患でミトコンドリア機能障害の関与が示唆

 自閉スペクトラム症(ASD)、双極性障害、統合失調症など多くの精神疾患で、ミトコンドリア機能障害の関与が示唆されている。自閉症と診断された患者の中には、後にミトコンドリア病と診断される者がおり(PLoS One 2008; 3: e3815)、ミトコンドリア病の存在は双極性障害への感受性を高める(J Neurol Neurosurg Psychiatry 2020; 91: 892-894)。ミトコンドリア機能障害が、どのようにしてこれらの精神疾患につながるかは明らかでない。ミトコンドリアの二大機能として、細胞のエネルギー源であるアデノシン三リン酸(ATP)の産生とカルシウムイオンの取り込みがあり、いずれもミトコンドリア呼吸鎖の活動によって生じるミトコンドリア膜電位により駆動されることから、精神疾患との関連を検討するには、ミトコンドリア呼吸鎖の活性をin vivoで測定することが重要となる。

 近年、ミトコンドリア呼吸鎖の複合体I(MC-I)の放射性リガンドである[18F] BCPP-EF(2-tert-butyl-4-chloro-5-{6-[2-(2[18F] fluoroethoxy)-ethoxy]-pyridin-3-ylmethoxy}-2H-pyridazin-3-one)が開発された(PLoS One 2017; 12: e0170911)。既にこのリガンドを用いた検討から、アルツハイマー病患者の側頭葉内側部において[11C] PBB3で評価したタウ蛋白質の蓄積に相関して、[18F] BCPP-EFの標準取込値比が低下することが示されている(Mol Neurodegener 2021; 16: 28)。

 今回紹介する研究では、浜松医科大学精神医学講座教授の山末英典氏らのグループがこの方法を用いてASD患者の脳代謝を分析したものである(Am J Psychiatry 2022年9月7日オンライン版)。

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