寛解中のIBD、抗TNFα療法の中止は可能か?

継続と中止の影響を比較するEXIT試験より

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:抗TNFα療法の長期化で副作用、医療費の増大に懸念

 抗TNFα療法は、炎症性腸疾患(IBD)の治療に目覚ましい進歩をもたらした。一方で、長期的な使用は感染症や悪性腫瘍のリスク上昇の懸念につながりうる。また、高価な生物学的製剤を長期使用する患者が増えることによる医療費の増大は、患者と社会の双方にとって大きな負担となるため、わが国においては特定疾患医療費助成制度の維持という観点からも、医療経済的視点は重要性を増している。

 そうした背景から、長期にわたって持続的寛解状態にあるIBD患者において、抗TNFα療法の中止が可能かどうかを検討する試みが行われている。その1つとしてわれわれは、日本において潰瘍性大腸炎(UC)患者におけるインフリキシマブの休薬の是非を問う非盲検ランダム化比較試験(RCT)HAYABUSAを行い、休薬によって再燃が増加することを報告した(Lancet Gastroenterol Hepatol 2021; 6: 429-437、①)。同様にクローン病(CD)については、二重盲検RCTのSTOP-IT(NEJM Evid 2022; 1: EVIDoa2200061、②)と非盲検RCTのSPARE(Lancet Gastroenterol Hepatol 2023; 8: 215-227、③)で休薬による再燃の増加が報告され、さらにはこれらの研究のシステマチックレビューとメタ解析でも休薬群では約3割が1~2年で再燃することが報告された(Clin Gastroenterol Hepatol 2024; 22: 22-33.e6)。

 本稿で紹介するEXIT試験は、IBD(UCおよびCD)患者を対象に、抗TNFα療法の継続と中止による影響を比較した研究であるが、両群ともに再燃率が低く有意な差がなかったという結果であったため、既報と比較して考察したい。(Gut 2024年12月20日オンライン版)。

小林 拓(こばやし たく)

北里大学北里研究所病院炎症性腸疾患先進治療センター センター長、病院長補佐、消化器内科部長、北里大学医学部消化器内科学 准教授

「1998年、名古屋大学医学部卒業。関連病院で研修の後、2004年より慶應義塾大学消化器内科特別研究員として炎症性腸疾患の研究に従事、2008年医学博士。2009年、米・ノースカロライナ大学博士研究員、2012年北里研究所病院消化器内科医長を経て炎症性腸疾患先進治療センター副センター長、2022年より現職。 日本消化器病学会(専門医・指導医・学会評議員・ガイドライン委員)、日本消化器内視鏡学会(専門医・指導医・学術評議員)などに所属。日本炎症性腸疾患学会では国際交流委員会、機関誌編集委員会委員長、European Crohn's and Colitis Organisationのクローン病ガイドライン委員を歴任。

小林 拓
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