「とりあえず睡眠薬」を見直そう!

認知行動療法が身近になる

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:ベンゾジアゼピン系薬やZ薬には依存の問題

 以前は不眠症の治療といえば、ベンゾジアゼピン系の薬剤がよく使われていた。

 しかし、ベンゾジアゼピン系薬は一度始めてしまうと、なかなかやめられない。今どき、私自身がベンゾジアゼピン系薬を処方開始することはほとんどないが、当方が診療している患者が、受診時に他の病院で処方されてしまっていることは多い。

 そんな場合、毎晩2錠服用している人に「3日に1回、半錠に減らしてください」などと説明して、半年以上かけて辛抱強く減らし、やっと中止できた!と思ったら、他科から処方されてしまっていたのを知り、がっくりすることもしばしばである。

 いわゆるZドラッグといわれる薬剤(ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロン)が登場した時には、「ベンゾジアゼピン系ではない」ということで人気を博した。しかし、確かに化学的にはベンゾジアゼピン骨格は含まないものの、ベンゾジアゼピン受容体(GABA-A受容体のアロステリック部位)に結合するという点に変わりはなく、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の根本的な問題点は解消されていない。

 そんな中で、現在はオレキシン受容体阻害薬が第一選択薬となっており、今後ベンゾジアゼピン系睡眠薬やZドラッグによる依存などの問題が減少することを期待したいところである。

 しかしながら、「不眠症ならオレキシン受容体阻害薬」という考えも早計であろう。

加藤 忠史(かとう ただふみ) 

 順天堂大学精神医学講座主任教授。1988年東京大学医学部卒業、同病院で臨床研修、1989年滋賀医大精神医科大学講座助手、1994年同大学で医学博士取得、1995年米・アイオワ大学精神科に留学(10カ月間)。帰国後、1997年東京大学精神神経科助手、1999年同講師、2001年理化学研究所脳科学総合研究センター精神疾患動態研究チームリーダー、2019年理化学研究所脳神経科学研究センター副センター長を経て、2020年4月から現職。

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