肺線維症に待望の新薬!NEJM 2報を解説

PDE4B選択的阻害薬ネランドミラスト

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研究の背景:既存薬では疾患の進行を完全に止められない

 特発性肺線維症(Idiopathic Pulmonary Fibrosis;IPF)および進行性線維化性間質性肺疾患(Progressive Pulmonary Fibrosis;PPF)は、肺機能の不可逆的な低下と予後不良を特徴とする疾患群である。現在ニンテダニブ(商品名オフェブ)およびピルフェニドン(ピレスパ)という2つの抗線維化薬が臨床導入されているが(ただしピルフェニドンはPPFには適応を有さない)、疾患の進行を完全に止めることはできず、消化器症状などによる治療中断も課題である。

 そのような中、ホスホジエステラーゼ(PDE)4Bの選択的阻害薬であるネランドミラスト(nerandomilast、開発コードBI 1015550)が新たな治療選択肢として注目されている。ネランドミラストは経口投与可能な分子であり、前臨床試験では抗線維化作用と免疫調節作用の双方を示している。IPFおよびPPFを対象とした2つの国際共同第Ⅲ相試験〔FIBRONEER-IPF試験(N Engl J Med 2025; 392: 2193-2202)FIBRONEER-ILD試験(N Engl J Med 2025; 392: 2203-2214)〕の結果を詳述し、今後の治療戦略におけるネランドミラストの位置付けを考察する。


倉原 優 (くらはら ゆう)

国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科医師。2006年、滋賀医科大学卒業。洛和会音羽病院での初期研修を修了後、2008年から現職。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本感染症学会感染症専門医、インフェクションコントロールドクター、音楽療法士。自身のブログで論文の和訳やエッセイを執筆(ブログ「呼吸器内科医」)。著書に『呼吸器の薬の考え方、使い方』、『COPDの教科書』、『気管支喘息バイブル』、『ねころんで読める呼吸』シリーズ、『本当にあった医学論文』シリーズ、『ポケット呼吸器診療』(毎年改訂)など。

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