暴走する「アナボリックファースト」を止めよ!

軽症の骨粗鬆症にも骨形成促進薬を第一選択とする誤解

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

 「アメリカファースト」という言葉には食傷気味だが、最近は日本でも「日本人ファースト」というスローガンを掲げる政党が一定の支持を集めている。移民の大量流入によって社会的混乱を経験した欧米諸国で排外的な政策が支持されるのは理解できる。しかし、日本はそもそも移民や難民に厳しい政策を取り続けてきた国であり、いわば「今も昔も日本人ファースト」である。このように根拠の希薄な排外的政治理念については賛否両論あるだろうが、特定の対象を画一的に優先する「〇〇ファースト」という短絡的な思考には違和感を覚えざるをえない。

 さて近年、骨粗鬆症治療において「アナボリックファースト」という概念がアカデミアや製薬企業によって喧伝され、骨粗鬆症と診断された患者に対し、治療の初期段階から骨形成促進薬が第一選択として使われるという風潮が国内で広がりつつある。

川口 浩(かわぐち ひろし)

1985年、東京大学医学部医学科卒業。同大学整形外科助手、講師を経て2004年に助教授(2007年から准教授)。2013年、JCHO東京新宿メディカルセンター脊椎脊髄センター・センター長。2019年、東京脳神経センター・整形外科脊椎外科部長。2023年から現職。臨床の専門は脊椎外科、基礎研究の専門は骨・軟骨の分子生物学で、臨床応用を目指した先端研究に従事している。Peer-reviewed英文原著論文は350編以上(総計impact factor=2,060:2025年4月現在)。2009年、米国整形外科学会(AAOS)の最高賞Kappa Delta Awardをアジアで初めて受賞。2011年、米国骨代謝学会(ASBMR)のトランスレーショナルリサーチ最高賞Lawrence G. Raisz Award受賞。座右の銘は「寄らば大樹の陰」「長いものには巻かれろ」。したがって、日本の医療の「大樹」も「長いもの」も、公正で厳然としたものであることを願っている。

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