「骨粗鬆症GL2025年版」に物申す!

科学的正当性からも、国際的整合性からも大きく乖離

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乱暴な3段階判定を採用

 『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版』(2025年版GL)が2015年版から10年ぶりに改訂された(関連記事「『骨粗鬆症の予防と治療GL 2025』、10年ぶりに改訂」)。しかしながら、今回の改訂は科学的正当性からも国際的整合性からも大きく乖離したものとなっている。

 骨粗鬆症治療の究極の目的は「骨折の予防」である。したがって、臨床現場が治療薬選択の判断材料としてガイドラインに最も期待するのは「骨折抑制効果」の公正な評価である。従来の国内外のガイドラインでは椎体骨折、非椎体骨折、そして一部のガイドラインではそれらに加えて、大腿骨近位部骨折のそれぞれに独立した評価が記載されていた。

 ところが、今回の2025年版GLは、国際的にも極めて特異な評価設計をしている。すなわち、①「椎体骨折、非椎体骨折、大腿骨近位部骨折の全てに有効」な場合は「行うことを推奨」、②「全てではないが少なくとも1つの骨折に有効」な場合は「行うことを提案」、③「いずれの骨折にも有効性が確認できない」場合は「行わないことを提案」―という乱暴な3段階判定を採用したのだ。この過度に単純化された硬直的な線引きは、科学的厳密性や統計学的限界を無視した極めて危うい基準である。

川口 浩(かわぐち ひろし)

社会医療法人社団蛍水会 名戸ヶ谷病院・整形外科顧問

1985年、東京大学医学部医学科卒業。同大学整形外科助手、講師を経て2004年に助教授(2007年から准教授)。2013年、JCHO東京新宿メディカルセンター脊椎脊髄センター・センター長。2019年、東京脳神経センター・整形外科脊椎外科部長。2023年から現職。臨床の専門は脊椎外科、基礎研究の専門は骨・軟骨の分子生物学で、臨床応用を目指した先端研究に従事している。Peer-reviewed英文原著論文は340編以上(総計impact factor=2,032:2023年7月現在)。2009年、米国整形外科学会(AAOS)の最高賞Kappa Delta Awardをアジアで初めて受賞。2011年、米国骨代謝学会(ASBMR)のトランスレーショナルリサーチ最高賞Lawrence G. Raisz Award受賞。座右の銘は「寄らば大樹の陰」「長いものには巻かれろ」。したがって、日本の整形外科の「大樹」も「長いもの」も、公正で厳然としたものであることを願っている。

川口 浩
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