抗VEGF療法に代わる?mRNAワクチンの可能性

患者負担の少ない新規治療法開発への期待

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:大きな「負担」が課題の抗VEGF療法

 加齢黄斑変性(AMD)や糖尿病網膜症(DR)などで生じる網膜脈絡膜新生血管(retinochoroidal neovascularization;NV)に対する抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法は、その登場以来、視機能温存の切り札となってきた。しかし、15年以上継続されてきたこの治療は、失明予防に大きく貢献した一方で、患者および医療現場に多大な負担を強いている事実は否定できない。頻回の硝子体内注射が求められ、経済的・時間的コストの増大、さらには患者が感じる「眼に針を打たれる恐怖」や合併症のリスクも問題となってきた。こうした現状を受け、より少ない負担で安定した効果が得られる新規治療法の探索は、眼科の最重要課題の1つである。

 本稿では、私が携わるmRNAワクチン研究の成果および最新の研究論文(Vaccine 2025; 61: 127451)を踏まえ、眼科領域における未来の治療戦略を展望する。

柳 靖雄(やなぎ やすお)

医療法人社団祥正会お花茶屋眼科手術外来院長、横浜市立大学視覚再生外科学客員教授、デューク・シンガポール国立大学医学部Adjunct Professor

東京大学医学部を卒業(1995年、MD)し、同大学大学院で医学博士号を取得(2001年、PhD)。基礎医学に強固な学術的バックグラウンドを持ち、200本以上の科学論文を執筆、国内外で10以上の賞を受賞。東京大学医学部眼科学教室講師(2012~15年)、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授(2016~20年)、旭川医科大学眼科学教室教授(2018~20年)を歴任し、現在は横浜市立大学視覚再生外科学客員教授(2020年~)およびデューク・シンガポール国立大学医学部Adjunct Professor(2020年~)として国際共同研究に積極的に関与している。専門は黄斑疾患で、新規治療薬に関する特許を多数出願。スタンフォード大学とエルゼビア社が2024年に発表した「世界のトップ2%の科学者リスト」に選出された。DeepEyeVisionの取締役としてAI技術の開発に携わり、国際誌「TVST」や「Scientific Reports」の編集者としても日本のプレゼンス向上に貢献。都内のクリニックでは質の高い診療を提供し、地域医療にも尽力。現在、医療経済研究、創薬、国際共同臨床研究など多岐にわたる分野で積極的に活動している。

柳 靖雄
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