肥大型心筋症妊婦の半数以上が妊娠中あるいは出産直後に心血管イベントを発症

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 妊娠・出産は,循環血液量の増大や血管抵抗の低下,凝固能の亢進など循環器系に変化をもたらすことが分かっているが,心疾患を有する患者に妊娠が加わった場合の影響については明らかではない。今回,国立循環器病研究センター周産期・婦人科の田中博明氏らは,初めて日本人の肥大型心筋症(HCM)妊婦を対象に妊娠経過や周産期予後についてレトロスペクティブに検討。半数以上の妊娠で心血管イベントが発生したことをCric J(2014;78:2501-2506)で報告した。

研究者の横顔

国立循環器病研究センター周産期・婦人科
田中博明氏

 田中氏は2001年に愛媛大学を卒業後,同氏の出身地にある宮崎大学産科婦人科学講座に入局した。当時教授であった池ノ上克氏(現・宮崎大学理事・病院長),講師の池田智明氏(現・三重大学産科婦人科学教授)に師事し,十数年間,地域での周産期医療を中心に取り組んだ。

 その後,目の前の患者さん1人1人に向き合うことも大事だが,周産期医療に関する知見や研究成果などを多くの医療者に提供,共有することでより多くの患者さんを助けたいと考え,当時,国立循環器病研究センター周産期・婦人科部長であった池田氏の誘いもあり,2013年同科へ。

 産婦人科診療の現場では正確な情報やエビデンスが乏しいため,心疾患を有する女性は妊娠をしてはいけないとの考えがあり,妊婦の診察を断るケースも見られる。同科は心疾患を抱える女性の周産期管理・最先端医療を提供する専門施設としての役割を担っており,そうした患者の治療経験が蓄積されていることから,田中氏らは,心疾患女性が妊娠したときにどのような経過をたどるかを疾患ごとに明らかにしたいと考え,順次,臨床研究を進めている。今回,機械弁合併妊娠に続き,HCM妊婦を対象とした研究結果を発表した。

 現在取り組んでいる研究の1つは,池田氏の研究グループに参加し,日本の妊産婦死亡についての解析である。日本の妊産婦死亡率は年々減少してきたものの,先進国の中ではいまだ標準的な水準である。

 これらの研究は「より多くの女性,特に心疾患を有する女性がより安全に妊娠・出産を終え,胎児も無事に成長し産まれること」を願う田中氏の目標につながっている。

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