心臓超音波組織ドプラ法を用いて心房リモデリングを評価,心房細動アブレーション後の再発を予測

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 心房細動(AF)は心房の電気的・構造的リモデリングを惹起し,リモデリングの進行はアブレーション治療後のAF再発リスクを高める。心房のリモデリングの評価には,心エコーで測定した左房径(LAD)や左房体積(LAV)などが用いられるが,これらの指標の多くが洞調律時にしか測定できないため,AFの持続期間が長くなるに従い評価が難しくなる。また,心房のリモデリングが進行した患者はアブレーション後のAF再発率が高く,手技には合併症リスクが伴うため,術前にリモデリングや再発リスクをより詳細に評価するための指標が求められている。日本大学板橋病院循環器内科の園田和正氏らは,AFアブレーション治療を施行した連続80例の前方視的検討の結果から,組織ドプラ法(TVI)により測定したAF時の左房壁運動の周期長(AFCL-tvi)および運動速度(AFW-V-tvi)が,心房リモデリングの非侵襲的な評価指標として有用であり,アブレーション後のAF再発を予測しうることをCric J(2014;78:1619-1627)に報告。TVIで測定したAFW-V-tviは,洞調律時に使用されるリモデリング指標とよく相関し,進行したAF患者にも使用できる利点があるという。

研究者の横顔

日本大学板橋病院循環器内科
園田和正氏

 園田氏は日本大学を2007年に卒業し,同大学での臨床研修4年目に同大学循環器内科(主任教授・平山篤志氏)に入局。臨床研修5年目に同大学大学院に入学し,博士論文として今回の論文をまとめた。医大への進学を目指していた高校時代,伯母が心筋梗塞で亡くなったことが,循環器医になった一番のきっかけだった。入局後,不整脈に対する根治治療としてのアブレーション治療と不整脈班の研究,教育の充実した体制に魅力を感じた。また治療を受けた患者から“胸が軽くなった”という言葉をよく聞き,その治療効果に感銘を受けた。

 園田氏は,同科の不整脈研究グループに所属し,同科教授の渡邊一郎氏,奥村恭男氏の指導を受け,AFアブレーションの非侵襲的な術前評価法について検討してきた。今回の研究では,心房中隔のTVI波から得られたAFのAFCL-tviとAFW-V-tviという2つの指標が心房のリモデリングやアブレーション後の再発予測に有用なことが示された。ただ,電気的リモデリングを反映するAFCL-tviよりも,構造的リモデリングを反映するAFW-V-tviの方が再発に強く関連することは予想していなかった(表)。そこで,データを再検討したところ,AFの進行に伴いAFCLが短縮することが一般に知られているが,左房の瘢痕化を含むより高度な心房の電気的リモデリングを有する患者ではAFCLが逆に増加傾向を示すという一部の報告に注目した。園田氏は「AFCL-tviは,心房の電気的リモデリングの初期段階では短くなるが,長期持続性AFに移行した段階では左房瘢痕化が電気活動可能領域を減少させるため,増大する傾向を示すと推測される。これに対し,AFW-V-tviは心房のリモデリングが進行するに従い直線的に減少すると考えられる」と考察している。

 同氏は次の研究テーマとして,術後の心室性不整脈の問題を考えており,今後も不整脈診療と非侵襲的評価法の研究に取り組んでいきたいとしている。

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