潜在性甲状腺機能低下症患者で心臓足首血管指数が増加

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 左室拡張障害のリスク要因として,高血圧,糖尿病,高齢女性の他,甲状腺機能低下症が知られている。潜在性の甲状腺機能低下症によっても脈波伝播速度(PWV)が増加し,動脈の硬さや左室拡張機能に影響することが示唆されている。兵庫医科大学循環器内科・臨床検査医学講師の正木充氏らは,横断研究の結果から,甲状腺機能が標準範囲内の者に比べて,潜在性甲状腺機能低下症患者では,新しい動脈硬化検査である心臓足首血管指数(CAVI)が増加していることをCric J(2014;78:1494-1500)に報告。潜在性甲状腺機能低下症において,CAVIは血中ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)値と正の相関を示している。またCAVIは血中C反応性蛋白(CRP)や心エコーにおける左室拡張機能と相関することが示された。

研究者の横顔

兵庫医科大学
循環器内科・臨床検査医学講師
正木充氏

 正木氏は,1999年に兵庫医科大学を卒業。研修医のころから非侵襲的で簡便な心臓超音波検査に大きな魅力を感じていた。

 同氏は2010年から同大学病院に勤務し,心臓超音波画像診断のスペシャリストである増山理教授から指導を受け,循環器内科で診療する一方,小柴賢洋教授の下で臨床検査に携わってきたことが,今回のCAVIに関する研究成果につながったという。

 動脈の硬さの評価法として従来PWVが主流で,わが国で開発されたCAVIの有用性に関するデータは限られている。こうした中,医師主導の多施設共同観察研究である「心血管イベント予知因子としてのCAVIに関する前向き研究」(CAVI-J,研究代表:医療法人財団健康院理事長・折茂肇氏,事務局代表:岡山大学循環器内科・三好亨氏)がスタートし,正木氏も参加している。CAVI-Jでは,2型糖尿病やメタボリックシンドロームなどの患者を2014年から5年間の予定で追跡し,CAVIの動脈硬化性心血管疾患診療指標としての有用性を検証するという。

 同氏は「潜在性甲状腺機能低下症患者におけるCAVIの長期的な推移や心血管イベント予測能を研究することで,動脈硬化や早期の左室拡張障害の治療につながる可能性がある。長期の観察が必要だが,今後も取り組んでいきたい」と述べている。

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