発作性AFでは有症候性よりも無症候性の方が持続性AFに移行しやすい

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 発作性心房細動(AF)から持続性AFへの移行,すなわちAFの慢性化には,高齢,器質的心疾患が関与するとされ,その背景に心房の構造的リモデリングの影響が示唆されている。また一般的に,AFの症状の出現頻度が単純にAFのエピソードとなり,慢性化につながると考えられている。ところが,発作性AF患者の観察研究であるベルグラード研究で,有症候性AFよりもむしろ無症候性AFの方が慢性化しやすいことが明らかにされ,追試結果が注目されていた。心臓血管研究所病院(東京都)循環器内科の妹尾恵太郎氏らは,同院の新患登録コホートである心研データベースから,日本人の発作性AF患者連続1,176例のAF慢性化について追跡調査。その結果,無症候性AFは低リスクにもかかわらず,有症候性AFよりも慢性化しやすいことが分かりCirc J(2014;78:1121-1126)に報告。この逆説的な結果は,無症候性AFへの積極的でない治療介入が招いたものと指摘している。

研究者の横顔

公益財団法人心臓血管研究所病院
妹尾恵太郎氏
(英・University of Birmingham,Centre for Cardiovascular Sciences City Hospitalに留学中)

 妹尾氏は,卒後研修を修了後,心臓血管研究所病院で3年間不整脈の診療に携わった。2012年,欧州心臓病学会(ESC)ガイドラインが改訂され,AF患者の症状の程度を簡便に評価する欧州不整脈学会(EHRA)症状スコアが提唱された。そこで,同研究所でfirst-detectedAFと診断された患者をEHRA症状スコア別に検討。無症候性AF患者に比べて,有症候性AF患者は高齢で,心不全発症率が高く,心房の構造的リモデリングが進行している傾向にあることを示唆した(Circ J 2012;76:1020-1023)。このとき,症状と心リモデリング(つまり,慢性化)との関係について興味を抱いていた。

 翌2013年,発作性AFと診断された1,100例を10年間追跡したベルグラード研究で,無症候性AFがより慢性化しやすいとの結果が報告された。同氏はこの新事実を日本人データで検証しようと同研究所の山下武志所長から助言を受けて解析した結果,今回,日本人でも無症候性AFの方が慢性化しやすいことが確認された。「これは臨床的に予想できた結果なのかもしれない。なぜなら,無症候性AF患者は,無症状であるが故に,病院受診が途絶えがちになり,受診したころには既に慢性化しているといったことをたびたび経験するからである。ただ,今後の課題は,無症候性AFの慢性化を防ぐ治療が予後を改善するかどうかを突き止めることである」と妹尾氏。

 同氏はこの4月からGregoryY.H.Lip教授の研究室に留学中だ。妹尾氏は「これまでの研究成果を生かして,同研究室でも引き続きAFの研究に取り組んでいきたい」と抱負を述べている。

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