少ない歯磨き回数が血管内皮機能低下に関連

歯磨き回数とFMD値との関連を検討

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 歯周病や口腔内の衛生状態は心血管病の独立した予測因子であるが,動脈硬化の初期から障害される血管内皮機能と口腔衛生との関係は明らかになっていない。広島大学循環器内科学の梶川正人氏らは,血管内皮機能評価法である血流依存性血管拡張反応(FMD)検査を受けた中高年男女190例を対象にした横断研究の結果から,歯磨き回数が1日1回以下という不良な口腔衛生状態が,血管内皮機能の低下(FMD2.9%未満)に関連することを明らかにした(Circ J 2014;78:950-954)。きちんと歯磨きすることは歯周病予防になるが,さらに血管内皮機能の改善や動脈硬化性疾患の発症予防につながる可能性もあるという。

研究者の横顔

広島大学循環器内科学
梶川正人氏

 梶川氏は,広島大学を卒業後,同大学病院循環器内科に入局,2011年に博士課程へと進み,学位論文として今回の研究をまとめた。同科では,教授の東幸仁氏を中心に歯周病やH.pylori感染症と血管内皮機能との関係について研究を進めてきた。今回の研究テーマは,歯磨き回数が生命予後の改善に寄与するという論文(de Oliveira C,et al.Toothbrushing,inflammation,and risk of cardiovascular disease:results from Scottish Health Survey.BMJ 2010;340:c2451)がきっかけとなった。それまでも,心筋梗塞を発症した患者は歯が悪いことが多いという印象があった。歯磨きという毎日の生活習慣を変えるだけで,疾病予防につながるかもしれないというのが面白いと思った。歯磨き回数による効果が証明できれば,外来でも簡単に指導できるし,実践しやすい。患者によっては血管内皮機能障害が改善して病状が良くなり,投薬も減らすことができるかもしれないなど可能性の広がるテーマだと感じたという。

 ただ,歯磨き回数が1日1回以下か2回以上かという単純な区分けで,血管内皮機能に差が出るとまでは予想し切れなかった。しかし,歯磨き回数は,独立して血管内皮機能に関連することが示された。現在,さらに追加の検討を進めている。

 梶川氏は今年で臨床医になって9年目になる。外来診療での生活習慣の指導は,単に指導するのではなく,根拠となるデータを基に診療することが重要と感じているという。

 同氏は「1日2回以上,しっかりと歯磨きすることは口腔衛生状態の改善だけでなく,血管内皮機能を改善し,動脈硬化性疾患の発症抑制や医療費削減につながる可能性がある。しかし,さらに研究が必要である。生活習慣の指導について,さまざまな角度から研究が進められているが,われわれは血管内皮機能評価を用いて歯磨きの有効性に関するエビデンスを蓄積し,診療で参考になるデータを提供していきたい」と抱負を述べている。

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