クロピドグレルからプラスグレル低用量投与への切り替えにより血小板抑制作用が増強

〜PCI後安定CAD患者の抗血小板薬2剤併用療法〜

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 第3世代のチエノピリジン誘導体であるプラスグレルは,クロピドグレルに比べて反応性の個体差が少なく,血小板抑制効果が高い。しかし,日本でのプラスグレルの承認用量は欧米の約3分の1であり,日本人の患者で,クロピドグレルからプラスグレル低用量(3.75mg/日)への切り替えによる薬力学的効果を検討したデータは多くない。千葉大学循環器内科の西毅氏らは,アスピリンとクロピドグレルの2剤併用療法を受けている,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後安定冠動脈疾患(CAD)患者53例の前向き研究の結果から,クロピドグレル標準用量からプラスグレル低用量への切り替えにより血小板抑制作用の増強が期待できることを,Circ J(2015; 79: 2439-2444)に報告した。

研究者の横顔

西氏

千葉大学循環器内科 西 毅氏

 西氏は,2008年千葉大学医学部を卒業後,一般病院での研修を終え,2012年4月から同大学大学院医学研究院循環器内科学講座の大学院生となり,同科の小林欣夫教授の指導を受け,診療と研究に取り組んでいる。今回の研究は,日本人の安定CAD患者で,クロピドグレルからプラスグレル低用量への切り替え前後の血小板反応性を評価した最初の知見となった。国内の第Ⅲ相試験(PRASFIT-ACS試験,PRASFIT-Elective試験)との矛盾はなく,クロピドグレル標準用量と比較して,プラスグレル維持用量でより強い血小板抑制効果が示された。

 クロピドグレル服用下のHPRは,ステント血栓症や心筋梗塞のリスクを増加させる。今回の研究では,クロピドグレルからプラスグレルへの切り替えによる非HPR(PRU 208以下)達成率は59.1%と欧米の報告に比べて低かった。しかし,安定CADにおけるHPRカットオフ値は日本人で同定されていないため,欧米人のカットオフ値を使用した点に留意する必要がある。今回の結果から,プラスグレル抵抗性例はクロピドグレルにも抵抗性である可能性が高いと考えられることから,西氏は「抗血小板薬に抵抗性があるかどうか分からない症例で,特にACS,複雑なステント留置例やステント留置早期など血栓症リスクの高い症例などでは最初からプラスグレルを使うことが合理的な選択と思われる」としている。

 同氏は「今後も抗血小板療法,冠動脈イメージングや冠循環について研究を続け,より良い診断や治療に貢献できるよう取り組みたい」と抱負を述べている。

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