ランニングは胃食道逆流にどのように影響するか?:アスリートの消化管機能の変化

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研究の背景:運動による胃食道逆流症状がパフォーマンスにも影響?

 ブラジル・ リオデジャネイロオリンピック、そしてパラリンピックと、世界中の注目は連日、スポーツに集中している。スポーツは生体に極度の負荷をかけるものでもあるが、それによる消化管への影響についての研究はいまだ多くない。シンクロナイズドスイミングの団体での銅メダル、デュエットでの銅メダル獲得は、井村雅代ヘッドコーチの厳しい指導があってのものであることが連日、報道をにぎわした。「ハイポキシック」と呼ばれる低酸素状態の極限まで挑戦する選手たちのトレーニングは、日頃の訓練をしていない普通の人がやればすぐに病気になるようなレベルかもしれない。しかし、彼女らは病気になるわけではない。日常のトレーニングがそれに打ち勝つアダプテーションを生んでいると考えるべきであろう。

  スポーツによる内臓への影響について、心血管系に注目が集まりがちであるが、副交感神経臓器ともいわれる消化管も忘れてはいけないと思う。消化管症状のうち胸やけ・呑酸に代表される胃食道逆流症状は、スポーツ選手の間では頻繁にある症状であり、それによって選手のパフォーマンスに負の影響があることも考えられている(JAMA 1989; 261: 3599-3601Med Sci Sports Exerc 2003; 35: 730-735Am J Gastroenterol 2004; 99: 1430-1436Am J Gastroenterol 2016; 111: 947-948)。しかし、運動中の過剰な逆流の機序については、これまでに十分に解明されてきたとはいえず、不明な部分も多い。最近、オランダのAcademic Medical CenterのHerregodsらがランニング運動と胃食道逆流についての興味深い研究データを発表したので(Am J Gastroenterol 2016; 111: 940-946)、紹介する。

鈴木 秀和(すずき ひでかず)

鈴木先生

慶應義塾大学 医学教育統轄センター教授。

1989年に慶應義塾大学医学部を卒業し、1993年に同大学大学院医学研究科博士課程修了 。同年に米国カリフォルニア大学サンディエゴ校研究員、2005年に北里研究所病院消化器科医長を経て、2006年に慶應義塾大学医学部内科学(消化器)専任講師 、2011年に同大学内科学(消化器)准教授。2015年11月より現職。
東京歯科大学内科学客員教授、日本微小循環学会理事長、Rome委員会委員、日本ヘリコバクター学会理事、日本潰瘍学会理事、日本神経消化器病学会理事、日本臨床中医薬学会理事、日本消化器病学会財団評議員、AGAフェロー、ACGフェロー、Rome財団フェロー。

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