低用量アスピリンの消化管出血・潰瘍リスクに、PPIとH2ブロッカーで有意差なし

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする
感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:PPI優位の結果にも異議を唱える解釈も

 消化管出血の既往のある低用量アスピリン服用者でプロトンポンプ阻害薬(PPI)による消化管出血の再発リスク低減効果は以前から示されていた(NEJM 2001; 344: 967-973NEJM 2005; 352: 238-244)。一方で、H2ブロッカー(H2RA)については、Tahaらが内視鏡を用いた二重盲検プラセボ対照ランダム化試験(FAMOUS試験)で、ファモチジンのアスピリン潰瘍予防効果を明らかにしている(Lancet 2009; 374: 119-125)。しかし、NgらによるPPIのpantoprazoleとH2RAのファモチジンを比較したランダム化試験では、上部消化管出血と重症のディスペプシア症状予防には、ファモチジン(1日40㎎、朝夕2分割)は、pantoprazole(1日20㎎、朝20㎎、夕 プラセボ投与)に比し劣性であることが報告されていた(Gastroenterology 2010; 138: 82-88)。

 実際に、このNgらの試験では、130人のうち65人がファモチジン群に、65人がpantoprazole群に割り付けられたが、一次評価項目であるディスペプシア症状や出血性潰瘍・びらんの再発率はファモチジン群で20%、pantoprazole群で0%、消化管出血はファモチジン群で7.7%、pantoprazole群で0%であった。また、この試験では、潰瘍による穿孔や狭窄は1例も認められなかった。しかし、これらの研究は、アスピリン服用者で上部消化管出血のリスクが最も高い(NEJM 2000; 343: 834-839)と考えられる「消化管出血の既往」のある患者だけをエントリーしたわけではなく、出血の既往のある人もない人も混ざっていたのである。さらに、試験にエントリーした患者数も比較的少ないなど、結果の解釈には問題が含まれると考えられていた。

鈴木 秀和(すずき ひでかず)

鈴木先生

慶應義塾大学 医学教育統轄センター教授。

1989年に慶應義塾大学医学部を卒業し、1993年に同大学大学院医学研究科博士課程修了 。同年に米国カリフォルニア大学サンディエゴ校研究員、2005年に北里研究所病院消化器科医長を経て、2006年に慶應義塾大学医学部内科学(消化器)専任講師 、2011年に同大学内科学(消化器)准教授。2015年11月より現職。
東京歯科大学内科学客員教授、日本微小循環学会理事長、Rome委員会委員、日本専門医機構・専門医認定・更新部門委員会委員、日本ヘリコバクター学会理事、日本潰瘍学会理事、日本神経消化器病学会理事、日本がん予防学会理事、日本消化器病学会財団評議員、AGAフェロー、ACGフェロー、Rome財団フェロー。

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする