5日間の市中肺炎治療は妥当か

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:多くの感染症の治療期間はわりと「ざっくり」

 どの抗菌薬がどの感染症に効くかについて、微生物学的、臨床医学的知見は豊富である。問題は、治療期間だ。治療期間についてはわりと「ざっくり」である。

 よくガイドラインには7〜14日間とか、4〜6週間とか、分かりやすい推奨が載せられているが、その根拠はたいてい専門家の経験値にすぎない。そもそも、微生物やわれわれの人体が、キリスト教的「1週間」という単位で行動するという発想が非科学的だ(だから13日間という治療期間は絶対タブーなのかしら)。

 治療期間は治療薬への曝露時間に大きく影響を与える。曝露時間は薬剤耐性菌の発生リスクに影響を与えるし、入院期間にも影響を与える。過度に長い入院期間はコスト的にも問題だし、患者の合併症リスクも増すであろう。もちろん、過度に短い治療期間で治療効果が落ちるのは論外だ。感染症の妥当な治療期間の設定は、臨床的にとても意義深いものなのである。 

 というわけで、ここ数年、感染症の治療期間を検証した臨床研究が増加傾向にある。今回紹介するのは、その中でもコモンな感染症の親玉的存在、市中肺炎(community-acquired pneumonia;CAP)の治療期間に関する論文である。

岩田 健太郎(いわた けんたろう)

岩田氏

1971年、島根県生まれ。島根医科大学卒業後、沖縄県立中部病院、コロンビア大学セントルークス・ルーズベルト病院、アルバートアインシュタイン医科大学ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院を経て、2008年より神戸大学大学院医学研究科教授(微生物感染症学講座感染治療学分野)・神戸大学医学部付属病院感染症内科診療科長。 著書に『悪魔の味方 — 米国医療の現場から』『感染症は実在しない — 構造構成的感染症学』など、編著に『診断のゲシュタルトとデギュスタシオン』『医療につける薬 — 内田樹・鷲田清一に聞く』など多数。

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