道路交通法が改正され、今年(平成 29 年) 3 月から施行されている。この中で、医師にとって関係の深い規定の1つが、運転免許更新時や一定の交通違反を犯した際に警察で行う簡易の認知機能検査の結果、「第 1 分類」(認知症の疑いあり)となった 75 歳以上の高齢者が公安委員会の指示により、認知症であるかどうかの検査・診断を受けることが求められるようになった点であろう。指定医や一般のかかりつけ医にとって心配なのが、「認知症ではない」「運転に支障がない」といった判断をした診断書を作成した場合、診断を受けた患者(ドライバー)が交通事故を起こしたとき、医師が運転をさせたことに寄与したとして損害賠償請求を受けるのではないかとの危惧、ひいては誤診で運転をさせて、交通事故を起こし誰かが死亡したとして、業務上過失致死傷(刑法211条)で告訴されるような事態にならないかという懸念であろう。もちろん逆に、認知症だと診断されたことで運転ができなくなったとクレームが付く場合も十分想定される(本当はこっちがやっかいである)。今回は、この件について解説をしたい。