離島発! 整形"内科"!? Hydro-release!?

外来超音波診療のススメ

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

内科外来と外科外来を交互に

 その日は突然やってきました。2010年3月で大学から派遣の腹部外科医の撤退が決定。対象人口6,000人とはいえ、たった1人の腹部外科医が不在となるのです。代替の確保はままならず、頭を悩ませました。ただ、1人の腹部外科医がいたとしても、「麻酔医不在」「輸血なし」「天候さえよければヘリコプターによる搬送体制はあり」といった状況で、どこまで当院ですべきかという判断は難しいところです。結局、腹部手術は虫垂炎、ヘルニアも含めて休止としました。もともと腹部外科の手術は年間10~20例。やはり気になるのは腹部外科系の急患対応です。逆に腹が座って「早期診断」「overdiagnosis」「適切な搬送」を心がけることで、今のところはなんとか対応できています。

 一方で外科の外来診療が課題となりました。整形外科の常勤医のいない当院の外科外来を受診する患者さんの多くは腰痛、肩凝りに対するトリガーポイント注射が対象。後は、皮膚科や耳鼻科、眼科の処置、小手術とドレナージが必要な腫瘤や感染系のものです。つまり、へき地の診療所で総合診療医が対応している疾患がほとんどです。というわけで、よくある日常疾患を診る外科外来は総合診療医が継続する、という形にしました。現在、当院の常勤医は内科兼小児科外来と外科外来を交互に行っています。

外来診療の概念を変える外来見学

 腹部外科医の撤退が決まったころ、運動器エコーの存在を見聞きするようになりました。エコー自体は腹部、心臓、甲状腺、乳腺、頸動脈と一通りやっていたのですが、運動器に関しては知識ゼロ。少しでも質の高い外来診療を行うために、習いに行くことにしました。第一人者が学生時代の先輩の皆川洋至先生だったことは幸いでした。

白石 吉彦(しらいし よしひこ)
 離島総合医。1992年に自治医科大学卒業後、徳島で研修、山間地のへき地医療を経験。1998年に島根県の隠岐諸島にある島前診療所(現隠岐島前病院)に赴任。2001年に同院院長。周囲のサテライトの診療所を含めて総合医の複数制、本土の医療機関との連携をとりながら、人口6,000人の隠岐島前地区の医療を支えている。
 2014年に第2回日本医師会赤ひげ大賞受賞。著書に『離島発 いますぐ使える!外来診療小ワザ離れワザ』(中山書店、2014)、『THE整形内科』(南山堂、2016.5、編集幹事)。

白石 裕子(しらいし ゆうこ)
 離島総合医。1994年に自治医科大学卒業。徳島県立中央病院、徳島大学病院小児科、徳島県立三好病院、西祖谷診療所勤務。1997年に第1子出産。1998年に島根県隠岐諸島・西ノ島の島前診療所に赴任、西ノ島町立浦郷診療所長兼務。2001年に第2子出産。2003年に島根県立中央病院にて後期ローテート研修。2004年に隠岐島前病院に再度赴任、浦郷診療所長を兼務、第3子出産。知夫診療所へ週1回派遣。2006年に第4子出産。2010年に隠岐島前病院小児科長、西ノ島町内の学校医、園医、乳児〜就学時、5歳児健診、予防接種など小児科業務と総合内科、診療所業務、病院業務などを行う。
 2015年に自治医科大学地域医療学教室学外講師地域担当。2015年に第2回やぶ医者大賞受賞(兵庫県養父市)。

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