マクロライドの光と影

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:ボスは予後が悪い

 あなたの上司のことではない。移植後のBOSのことだ。が、その前にマクロライドの話をする。

 マクロライド系抗菌薬は抗菌効果のみならず、抗炎症作用もあるということで、いろいろな疾患に応用されてきた。一番有名なのはびまん性汎細気管支炎(Diffuse panbronchiolitis;DPB)に対するマクロライド少量長期療法で、予後不良のこの疾患の治療法としてはほぼ確立しているといってよい。このDPB治療の拡張版という形で、多くの呼吸器内科医や耳鼻科医がさまざまな疾患にマクロライドを用いてきた。しかし、有効性や安全性が妥当な臨床試験で評価されているわけではなく、「使うと良くなる患者がいる」というかなり薄弱な根拠で用いられているのが現状だ*1

*1Videler WJM, van Hee K, Reinartz SM, Georgalas C, van der Meulen FW, Fokkens WJ. Long-term low-dose antibiotics in recalcitrant chronic rhinosinusitis: a retrospective analysis. Rhinology. 2012 Mar; 50(1): 45-55.

岩田 健太郎(いわた けんたろう)

岩田氏

1971年、島根県生まれ。島根医科大学卒業後、沖縄県立中部病院、コロンビア大学セントルークス・ルーズベルト病院、アルバートアインシュタイン医科大学ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院を経て、2008年より神戸大学大学院医学研究科教授(微生物感染症学講座感染治療学分野)・神戸大学医学部付属病院感染症内科診療科長。 著書に『悪魔の味方 — 米国医療の現場から』『感染症は実在しない — 構造構成的感染症学』など、編著に『診断のゲシュタルトとデギュスタシオン』『医療につける薬 — 内田樹・鷲田清一に聞く』など多数。

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