気胸治療の太径 vs. 細径  

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研究の背景:胸腔ドレーンは痛い、 細径がよさそうだが効果は劣らないか?

 胸腔ドレーンは、挿入すると痛い。もちろん、局所麻酔をするが、その後、ドレーンと日常生活をともにしなければならない。非ステロイド抗炎症薬(NSAID)を内服してもらうことが多いが、引っ張られるだけで痛いと訴える患者も少なくない。

 そのため、太い胸腔ドレーンよりも細い胸腔ドレーンの方がよいのではないかという風潮がある。例えば、胸腔ドレーンが閉塞しやすそうな膿胸でさえも、細径の胸腔ドレーンを用いればアウトカム不良を招かず、かつ疼痛の合併症を少なく管理できるという報告がある(Chest 2010;137:536-543)。この2010年の報告では10Fr未満というかなり細いドレーンも適用されているが、個人的にはさすがに膿胸で10Fr未満の管理は難しいのではないかと今でも思っている。

 膿胸であろうと気胸であろうと、よほど小柄な高齢者でなければ、16~20Frくらいの胸腔ドレーンを入れることが多く、10~14Frを選択している医師は私の周りではマイノリティーである。細過ぎると、胸膜癒着術や線維素溶解療法などの胸腔ドレーンから逆行して薬剤を注入する処置がやりにくいことが、理由として挙げられる。

 さて、今回紹介する論文は、CHEST2018年2月13日オンライン版)に掲載されたシステマチックレビューとメタ解析で、気胸に対する太径胸腔ドレーンと細径胸腔ドレーンの効果を検証したものである。気胸に関して言えば、個人的には膿胸よりドレーン閉塞リスクは少ないと感じている。もちろん、細過ぎてへしゃげてしまうので閉塞するリスクは付きまとうが、血餅や膿によって閉塞するリスクは膿胸に比べると格段に低いはずだ。

倉原 優 (くらはら ゆう)

国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科医師。2006年、滋賀医科大学卒業。洛和会音羽病院での初期研修を修了後、2008年より現職。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本感染症学会感染症専門医、インフェクションコントロールドクター、音楽療法士。自身のブログで論文の和訳やエッセイを執筆(ブログ「呼吸器内科医」)。著書に『呼吸器の薬の考え方、使い方』、『COPDの教科書』『気管支喘息バイブル』、『ねころんで読める呼吸』シリーズ、『本当にあった医学論文』シリーズ、『ポケット呼吸器診療』(毎年改訂)など。

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