やはり頼りになるST合剤

ニューモシスチス肺炎の予防

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:当たり前となったST合剤予防だが、ほとんどがHIVでのエビデンス

 長期に全身性ステロイドや免疫抑制剤を使っている患者では、ニューモシスチス肺炎(PCP)が大きな懸念である。当院にも両肺野にすりガラス陰影を呈した患者が紹介されるが、基礎疾患いかんではPCPを積極的に疑っている。

 PCPを疑うポイントはいくつかあるが、特に急速に出現したすりガラス陰影や血清LD・β-Dグルカンが高値のケースでは要注意である。誘発喀痰ではなかなか診断がつかないことも多く、積極的に疑う場合は酸素条件が許せば気管支肺胞洗浄に踏み切っている。

 さて、PCPの予防に関してはスルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST)合剤が第一選択であり、1日1錠のレジメンを用いている人がほとんどだろう。PCPの予防については、ほとんどがHIV患者に対するエビデンスであり、非HIVではどういう効果があるのか、エキスパートによって意見が異なる(と思う)。

 小児例や臓器移植例などの特殊なケースも含めたメタ解析によれば、1例のPCP感染を予防するためのST合剤のnumber needed to treat(NNT)は19(95%CI 17~42)とされており、感染例を85%減らせると報告されている(Cochrane Database Syst Rev 2014;CD005590)。

 今回、上記特殊例をのぞいて、膠原病に対して全身性ステロイドを用いられた患者におけるST合剤の予防効果が評価された(Ann Rheum Dis 2018;77:644-649)。

倉原 優 (くらはら ゆう)

国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科医師。2006年、滋賀医科大学卒業。洛和会音羽病院での初期研修を修了後、2008年より現職。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本感染症学会感染症専門医、インフェクションコントロールドクター、音楽療法士。自身のブログで論文の和訳やエッセイを執筆(ブログ「呼吸器内科医」)。著書に『呼吸器の薬の考え方、使い方』、『COPDの教科書』『気管支喘息バイブル』、『ねころんで読める呼吸』シリーズ、『本当にあった医学論文』シリーズ、『ポケット呼吸器診療』(毎年改訂)など。

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