混沌とする軽症喘息の治療

シムビコート頓用だけで管理できるか

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:現行指針では軽症喘息には低用量ICS+頓用LABAを推奨

 ブデソニド・ホルモテロールフマル酸塩配合剤(以下、商品名のシムビコートで表記)には、吸入ステロイド(ICS)と吸入長時間作用性β2刺激薬(LABA)が含まれている。この配合剤のよいところを1つ挙げるとすれば、SMART療法という特殊な吸入法が可能という点である(Thorax 2010; 65: 747-752)。これは、コントローラーとしてシムビコートを吸入している状態で、喘息増悪時にさらにシムビコートを上乗せで吸入することで、発作を抑えるリリーバーとしての役割も兼ね備えるという治療法である※1

 現在、軽症喘息の治療に関してシムビコートが登場する余地はない。なぜなら、Global Initiative for Asthma(GINA)ステップ2※2のような軽症例では「低用量ICS+短時間作用性β2刺激薬(SABA)の頓用」が推奨治療とされているためだ。今回紹介するSYGMA1、2試験(N Engl J Med 2018;378:1865-18761877-1887)では、GINAステップ2の患者を対象としており、この領域にシムビコートの入り込む余地があるのかどうかを検証しようというのだ。

 アストラゼネカ社の助成があるとはいえ、「なかなか貪欲な研究だな」と感じた。

倉原 優 (くらはら ゆう)

国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科医師。2006年、滋賀医科大学卒業。洛和会音羽病院での初期研修を修了後、2008年より現職。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本感染症学会感染症専門医、インフェクションコントロールドクター、音楽療法士。自身のブログで論文の和訳やエッセイを執筆(ブログ「呼吸器内科医」)。著書に『呼吸器の薬の考え方、使い方』、『COPDの教科書』『気管支喘息バイブル』、『ねころんで読める呼吸』シリーズ、『本当にあった医学論文』シリーズ、『ポケット呼吸器診療』(毎年改訂)など。

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