経口免疫療法にBaked milk(強く加熱した牛乳)を使えるか?

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研究の背景:リスクとの兼ね合いが難しい経口負荷

 食物アレルギーへの対応は一般的に、食物経口負荷試験(実際に食べてみて症状があるかどうかを確認する)を行いつつ摂取できる量を確認しながら「必要最小限の除去」を目指すことになる。しかし、食物経口負荷試験で食べられることが分かっても、継続して食べられない児が11%もいるという報告がある(Allergy 2017; 72: 731-736)。

 それまで食べていなかった食物を、経口負荷試験で「じゃあこれから食べてもいいですよ」と言っても、心理的にも、食べ慣れていないことからも継続的な摂取には抵抗があることは想像に難くない。さらに、小児に対する食物経口負荷試験では、より高年齢であるとリスクが高い(Ann Allergy Asthma Immunol 2018; 121:360-365)。

 こういった事情から、そのまま生乳を用いる経口負荷試験は実施し難いことも多い。そのため、リスクに配慮しながら摂取を続ける上では、「加熱加工した食品」が魅力的に映る。

 タイトルにある「Baked milk」とは、マフィンなどに含まれる「強く加熱した牛乳」のことで、最近、この「Baked milk」を経口免疫療法に応用しようとする試みがなされた(もちろん、積極的に少しずつアレルゲンの摂取量を増やして食べられるようになることを目指す「食物経口免疫寛容誘導療法」はリスクがあるために『食物アレルギー診療ガイドライン2016』では注意を喚起している)。

 今回は、加熱加工した牛乳により、牛乳アレルギーの経口免疫療法を試みたランダム化比較試験(Allergy Immunol 2018年7月20日オンライン版)を紹介したい。 

堀向 健太(ほりむかい けんた)

東京慈恵会医科大学葛飾医療センター小児科医師。1998年、鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院および関連病院での勤務を経て、2007年、国立成育医療センター(現国立成育医療研究センター)アレルギー科、2012年から現職。
日本小児科学会専門医。日本アレルギー学会専門医・指導医。
2014年、米国アレルギー臨床免疫学会雑誌に、世界初の保湿剤によるアトピー性皮膚炎発症予防に関する介入研究を発表。2016年、ブログ「小児アレルギー科医の備忘録」を開設し出典の明らかな医学情報の発信を続けている。

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