その感染対策、本当に結果を出してる?

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする
感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:日本の感染対策系加算は「形をつくる」だけ

 感染防止対策加算、抗菌薬適正使用支援加算など感染対策への金銭的誘導が生じたことで、今や、どの医療機関も一生懸命感染対策に勤んでいる・・・少なくとも頑張ろうという機運は生じつつある。

 しかし、感染対策は手段であって目的ではない。大切なのは薬剤耐性菌が減り、院内感染が減り、患者の健康が守られることである。

 ところが、日本の感染対策系の加算は、

・チームをつくる
・専従とか専任のスタッフを割り当てる
・マニュアルをつくる
・職員研修を行う
・会議を開く
・抗菌薬届出制、許可制を取る(効果があるか否かは、関係なく)

といった、「形をつくる」ことだけを要件としている。プロ野球チームに例えるならば、

・チームをつくる
・コーチや監督がいる
・マニュアルをつくる
・研修と練習を行う
・会議を開く
・ヒッティングやバントに対するサインと許可制を取る

みたいな感じである。これで強い、勝てる野球チームができるかというと、甚だ心もとない。大事なのは、

勝つ

ことではないのか。少なくともプロの世界においては。

 では、いかにしたら感染対策で

結果を出した

と言えるのだろうか。

 いろいろ対策やりました。各種パラメータ良くなりました。もいいでしょう。でも、それって前後関係? 因果関係? 単なるまぐれの可能性を無視し、ひたすら良くなりました、というのも問題である。

 まぐれ≒バイアスの排除にはランダム化と比較が便利だが、病院総出の感染対策できちんとした比較試験は難しいし、現実的でないことも多い。

 よって、因果関係の検証には一工夫が必要になるのだ。今回紹介するのは、そのような「比較群」なしで因果関係の追求を行った日本の研究である。

Honda H, Murakami S, Tagashira Y, Uenoyama Y, Goto K, Takamatsu A, et al. Efficacy of a Postprescription Review of Broad-Spectrum Antimicrobial Agents With Feedback: A 4-Year Experience of Antimicrobial Stewardship at a Tertiary Care Center. Open Forum Infect Dis [Internet]. 2018 Dec 1 [cited 2018 Nov 22];5(12). Available from: https://academic.oup.com/ofid/article/5/12/ofy314/5195957

岩田 健太郎(いわた けんたろう)

岩田氏

1971年、島根県生まれ。島根医科大学卒業後、沖縄県立中部病院、コロンビア大学セントルークス・ルーズベルト病院、アルバートアインシュタイン医科大学ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院を経て、2008年より神戸大学大学院医学研究科教授(微生物感染症学講座感染治療学分野)・神戸大学医学部付属病院感染症内科診療科長。 著書に『悪魔の味方 — 米国医療の現場から』『感染症は実在しない — 構造構成的感染症学』など、編著に『診断のゲシュタルトとデギュスタシオン』『医療につける薬 — 内田樹・鷲田清一に聞く』など多数。

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする