食物経口免疫療法、標準化への道険し

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研究の背景:潜在的なリスクと標準化の遅れが課題

 食物アレルギーに対する免疫療法には、経口、皮下、舌下、経皮の投与ルートがある。古くは1908年の経口免疫療法の症例報告にまでさかのぼるが、近代的な研究は1992年にピーナツ皮下免疫療法が実施されてからである(J Allergy Clin Immunol 1992; 90: 256-262)。しかし皮下免疫療法は極めて危険性が高いことが判明し、現在では行われていない。そしてようやく2006年、食物アレルギーに対する経口免疫療法の症例報告が発表され(Dig Dis Sci 2006; 51: 471-473)、最近では各種の食物アレルギーに対する症例報告やランダム化比較試験(RCT)が増えてきている。

 近代的な研究の開始後10年以上が経過した食物経口免疫療法だが、まだ検討が必要であることは間違いない。この療法が一般に使用できない理由としては、危険性が払拭できない点、標準化されていない点が挙げられる。

 こうした状況の中、食物経口免疫療法に標準化の動きが出始めている。AR101と名付けられたピーナツアレルギーに対する経口免疫療法薬は、既に第Ⅱ相試験が報告されていた(J Allergy Clin Immunol Pract 2018; 6: 476-485.e3)。そのAR101に関する第Ⅲ相試験である大規模RCTの結果がNEJM誌に報告されたのでご紹介したい(N Engl J Med 2018; 379: 1991-2001、関連記事「ピーナツアレルギーに有効な経口免疫療法薬」)。

堀向 健太(ほりむかい けんた)

東京慈恵会医科大学葛飾医療センター小児科医師。1998年、鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院および関連病院での勤務を経て、2007年、国立成育医療センター(現国立成育医療研究センター)アレルギー科、2012年から現職。
日本小児科学会専門医。日本アレルギー学会専門医・指導医。
2014年、米国アレルギー臨床免疫学会雑誌に、世界初の保湿剤によるアトピー性皮膚炎発症予防に関する介入研究を発表。2016年、ブログ「小児アレルギー科医の備忘録」を開設し出典の明らかな医学情報の発信を続けている。

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