経口免疫療法の摂取回数は多い方が良い?

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研究の背景:卵アレルギーをキャリーオーバーした際の対応に注目集まる

 『食物アレルギーの診療の手引き2017』によると、卵は小児における食物アレルギーの原因として最も多く、全体の39%を占める。

 乳児期の卵アレルギーは自然寛解が見込めるため、それまで除去食を使用するというのも対策の1つであるが、一定数がキャリーオーバーし寛解が難しくなる。そのため、キャリーオーバーした患児に対する経口免疫療法(Oral immunotherapy;OIT)が注目されている。

 OITとは、経口免疫寛容を利用した治療法であり、簡単にまとめるならば「症状が出ない量で経口的にアレルゲンを摂取していると寛解が誘導される」という性質を用いている。最近保険適応になったダニやスギに対する舌下免疫療法も、その延長線上にあるといえるだろう。

 もちろん、食物アレルゲンに対するOITは潜在的リスクが存在するため、現状では標準療法として推奨されていない。

 一方で、『食物アレルギー診療ガイドライン 2016』では「必要最小限の除去食」が推奨されるようになり、「摂取できる範囲であれば」完全除去は避けることが推奨されている。というのも、例えば卵アレルギーがあっても、少量を一定量(増量せずに)で継続して摂取すると、経口免疫寛容が誘導されてくることが分かってきているからだ(Pediatr Allergy Immunol 2018; 29: 512-518Int Arch Allergy Immunol 2016; 171: 265-268)。

 だが、後から誘導された免疫寛容は、それこそ2週間~2カ月程度の中断で失われる可能性が指摘されている。先行研究では、30〜75%の小児が、一定期間食物除去すると、達成されたはずの脱感作が失われることを示している(J Allergy Clin Immunol Pract 2015; 3: 532-539Clin Exp Allergy 2015; 45: 1833-1843

 そこで、一般的にOITの増量期では毎日の摂取を推奨されることが多い。しかし、毎日摂取させるのは決して容易ではなく、エキスパートによっては週2回の摂取を指導しているケースもある。

 果たして食物OITにおいて、原因食物は毎日摂取した方が良いのだろうか? それとも回数が少なくても効果は変わらないのだろうか? その検討を行った結果(Pediatr Allergy Immunol 2019; 30: 214-224)が最近報告されたのでご紹介したい。

堀向 健太(ほりむかい けんた)

東京慈恵会医科大学葛飾医療センター小児科医師。1998年、鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院および関連病院での勤務を経て、2007年、国立成育医療センター(現国立成育医療研究センター)アレルギー科、2012年から現職。
日本小児科学会専門医。日本アレルギー学会専門医・指導医。
2014年、米国アレルギー臨床免疫学会雑誌に、世界初の保湿剤によるアトピー性皮膚炎発症予防に関する介入研究を発表。2016年、ブログ「小児アレルギー科医の備忘録」を開設し出典の明らかな医学情報の発信を続けている。

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