呼吸器の平成と令和 倉原優

国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科

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平成を彩った3大ニュース

1.生物学的製剤の進歩

 関節リウマチにおいては、2003年から生物学的製剤が用いられるようになったが、喘息診療では2009年にオマリズマブ(商品名ゾレア)が臨床現場で使用されるようになった。当時の喘息診療医は皆、高IgE血症の喘息患者に対する劇的な効果に驚愕した。現在は、さらに3剤がラインナップが加わり、メポリズマブ(同ヌーカラ)、ベンラリズマブ(同ファセンラ)、デュピルマブ(同デュピクセント)が用いられている。いずれもインターロイキンに対する生物学的製剤で、好酸球数が高い喘息患者に著効することが示されている。

 アトピー性疾患を有する喘息患者の場合はデュピルマブによる恩恵を受けやすく、鼻ポリープを合併し好酸球性副鼻腔炎を有する喘息患者の場合はメポリズマブによる恩恵を受けやすいというエキスパートオピニオンはあるが、喘息においてこれらのhead to head試験は組まれておらず、使い分けは難しい。

 平成に入るまで、ステロイド依存に陥っていた治療ステップ4の喘息患者にとって、生物学的製剤や気管支サーモプラスティなど治療選択肢幅が広がったことは福音である。

 しかし、生物学的製剤といえども、関節リウマチに対しても喘息に対しても、原因を治すものではない。故に中止すると再燃する例があるのは事実である。次の時代に「根治」という課題をいまだ残しているとも言えよう。

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