タバコ問題は誰の問題だろうか。 この連載を開始するに当たり、初めに考えたことはタバコ問題と関連のない診療科があるのだろうか、ということだった。私は以前、血液内科医として働いていた。今振り返ってみると、当時の私はタバコ問題に無関心過ぎた。喫煙により急性骨髄性白血病の罹患率が増えるばかりでなく、白血病患者が喫煙していると肺炎や感染症のリスクが高まり、死亡につながることは分かっていた。にもかかわらず、当時の私は禁煙サポートのノウハウを知らず、骨髄移植を控えてなお喫煙を続けていた白血病患者に対して「死ぬから禁煙してくださいね」と言うだけだった。結局、その患者は禁煙できなかった。 当時の私は、血液内科医は診断や治療といった医療行為を行うことだけが仕事だと思っていた。治療には、化学療法は含まれるが、禁煙サポートまで含まれるとは考えていなかった。医療者として、タバコ問題を自分事だとは捉えられていなかったのである。