トンデモ医療情報に免疫をつけるワクチン本 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする <編集部より>三次救急指定病院で第二種感染症指定医療機関でもある川崎市立川崎病院に勤務する田中希宇人先生は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大する未曾有の事態を乗り越えるべく日夜多くの医療関係者とともに奮闘されています。そのような中、無理を承知の上で編集部から「ときどき、論文レビュー以外のことも寄稿いただけませんか」とご相談したところ、読書が趣味という田中先生から、「最高のがん関連本に出会いました」との連絡をいただきました。今回は番外編として、田中先生お薦めの一冊をご紹介いただきます。 津川友介、勝俣範之、大須賀覚著、四六判、256ページ、定価1,500円+税、ダイヤモンド社 日本では国民病といわれる「がん」について学校で習うことはほとんどありません。そのため、がん患者さんもその家族も、多くの人が「がん」に対する基本的な知識に乏しく、「トンデモ医療」と呼ばれる誤った治療や予防法に振り回されてしまう危険があります。 そこで、医療データ分析の専門家として米・カリフォルニア大学ロサンゼルス校の津川友介先生、日本医科大学の勝俣範之先生、米・アラバマ大学バーミングハム校の大須賀覚先生の3人のがん専門家が英知を結集して世に送り出した本が『最高のがん治療』です。 本書は医者や研究者でなくてもがんに関する正しい情報を得ることができ、誤った情報にだまされずに済む、いわゆるトンデモ医療情報の免疫をつけるワクチン本です。がん治療に携わる高名な3氏が執筆された科学的根拠に基づいた最も正しいがんの情報本です。がんを患った患者さんやその家族はもちろんのこと、がん診療に関わる医療者も目を通していただきたい1冊です。 〇「標準治療standard therapy」といわれる保険が適用される治療法が最も効果が期待できる最高のがん治療であり「最善治療」とも言い換えられる 〇代替治療のみで治療された患者群は標準治療を受けた患者群よりも生存率が低い 〇実際のところ、がんに対する直接的な効果を明確に示した民間療法は1つもない 〇怪しい「トンデモ医療」を信じた結果、標準治療の開始が遅れて手遅れになることがある 〇信頼できる専門家の2つの特徴として、①標準治療を推奨する②他の医師と治療の判断が変わらない-が挙げられる。 本書から、正しい医療情報を発信することは医療の一環としてトンデモ医療が広がるのを抑制し、正しい治療が受けられなくなってしまう患者さんを救える可能性があると力強いメッセージを受け取ることができました。私も引き続き正しい知識・情報の入手に励み、今後も学会や研究会、さまざまなメディア・SNSを通じた発信を継続していきたいと思わされた、今年最高の一冊でした。 追記:本書を恵贈いただいた大須賀覚先生に感謝申し上げます。 田中 希宇人(たなか きゅうと) 2005年、慶應義塾大学医学部卒業後、同大学病院での研修およびけいゆう病院での内科出向を経て2009年に同大学病院呼吸器内科医局に入局。2013年から川崎市立川崎病院で勤務。2017年4月より現職。認定内科医/総合内科専門医、日本呼吸器学会専門医・指導医、日本呼吸器内視鏡学会専門医、臨床研修指導医、がん治療認定医。3児のパパ。ブログ「肺癌勉強会」で肺がんに関する最新情報を発信中。 facebook:「肺癌勉強会」facebook:「川崎市立川崎病院 呼吸器内科」 Twitter:@cutetanaka (Oncology Tribuneの連載「きゅーと先生@肺癌勉強会の論文レビュー」より転載) 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×