第1回:その患者の問題は医学で解決できるかを見極めよ

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 あなたがある乳がん患者の主治医だと仮定して、次の文章を読んでほしい。乳がん診療の経験がなくても全く構わないので、自身が過去に厳しい病状の患者と向き合った経験を思い出しながら読んでいただきたいと思う。

あなたはかなり進行した乳がん患者(Aさん)の主治医だった。Aさんはシングルマザーで、13歳の娘がいた。今まで化学療法を続けてきたが、現在の体力を考えると、これ以上の積極的な治療は適応ではないと考えられ、そのことを彼女に率直に告げた。しかし彼女は「まだ諦めるわけにいかない。娘を独りにはできないから次の薬を投与してください。治療ができないということは私にとって絶望でしかありません。」と切々と訴えた。

清水 研(しみず けん)

がん研究会有明病院 腫瘍精神科 部長

1971年生まれ。精神科医・医学博士。金沢大学卒業後、都立荏原病院(現・東京都保健医療公社荏原病院)での内科研修、国立精神・神経センター(現・国立精神・神経医療研究センター)、都立豊島病院(現・東京都保健医療公社豊島病院)での一般精神科研修を経て、2003年、国立がんセンター(現・国立がん研究センター)東病院精神腫瘍科レジデント。以降、一貫してがん患者および家族の診療・ケアを担当している。2006年、同センター中央病院精神腫瘍科勤務。同科科長を経て、2020年4月より現職。日本総合病院精神医学会専門医・指導医。日本精神神経学会専門医・指導医。日本サイコオンコロジー学会登録精神腫瘍医。近著に『がんで不安なあなたに読んでほしい。 自分らしく生きるためのQ&A』(ビジネス社)、『もしも一年後、この世にいないとしたら。』(文響社)。

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