重症患者に去痰薬は効くのか

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研究の背景:多種多様な薬剤が存在、その有効性は?

 去痰薬といっても、喀痰のキレが悪い慢性期呼吸器疾患の患者に処方するものから、ネブライザーで急性期に吸入するものまで、さまざまなものがある。痰を取り去るもの以外の薬剤も含めるため、「喀痰調整薬」や「粘液活性物質」などと呼ぶ方がよいのだが、便宜的にここでは「去痰薬」で統一させていただく。

 無数、とまでは言わないが多種多様な去痰薬が存在するため、ここで扱うのは、ヘパリンネブライザー、N-アセチルシステイン(NAC)、アンブロキソールであることを先に書いておく必要がある。日本ではヘパリンを去痰薬として用いるプラクティスは残念ながらない。また、カルボシステインなど、日本の臨床でよく用いられている経口去痰薬は今回組み込まれていない。

 NACは、特発性肺線維症(IPF)などでも多用される、ネブライザーで吸入する去痰薬である。海外では経口薬が存在するが、日本ではムコフィリンという袋に入った液体で販売されている。アンブロキソールは経口薬の中では最も多く処方されるものの1つであり、私も外来でよく処方している。

 重症例において、去痰薬がプラセボと比較して効果を発揮するのかどうか、過去の臨床研究を集めてシステマチックレビューおよびメタ解析を行ったのが今回の報告である(Thorax 2020;75:623-631)。

倉原 優 (くらはら ゆう)

国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科医師。2006年、滋賀医科大学卒業。洛和会音羽病院での初期研修を修了後、2008年から現職。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本感染症学会感染症専門医、インフェクションコントロールドクター、音楽療法士。自身のブログで論文の和訳やエッセイを執筆(ブログ「呼吸器内科医」)。著書に『呼吸器の薬の考え方、使い方』、『COPDの教科書』、『気管支喘息バイブル』、『ねころんで読める呼吸』シリーズ、『本当にあった医学論文』シリーズ、『ポケット呼吸器診療』(毎年改訂)など。

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