10年後に伝えたい福島の「正の遺産」

越智 小枝

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

 2011年の東日本大震災発生から10年がたった。2万人超の直接死、5,000人超の関連死を生んだこの大災害を風化させまいと、当時を繰り返し再現し、語り継ぐ人は多い。しかし、歴史は語り継ぐだけで後世まで残る資産となりうるのだろうか。文芸評論家の小林秀雄は第二次世界大戦後の戦争体験の発信について、『直感を磨くもの:小林秀雄対話集』の中で次のように述べている。「深刻な体験をした人は、体験を買い被るね。(中略)人生は二度読めない。二度読めるのは思想です」。第二次世界大戦と同様、東日本大震災を体験した方々もまた、その強烈な記憶を風化させたくない気持ちはあるだろう。だが出来事を再現することにばかりとらわれた結果、後世の人間が二度と読みたくない物語になってしまっては意味がない。東日本大震災は、その悲しみが薄れた今だからこそあらためて学ぶことができる物語だ。本稿ではそのような物語の中から、われわれ医療者に残された「正の遺産」のうち4つを紹介する。

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