ウェブ講演会の「感染性」と「毒性」

伝えるべき情報が伝わって来ない新規OA注射薬

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景1:コロナ禍でウェブ講演会が盛ん

 コロナ禍で対面の講演会が軒並み中止になり、MRさんの医療機関への訪問も制限されている。これに代わってウェブ講演会が盛んに行われており、医療現場への情報提供の中心的役割を担っている。

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 これらの講演会は多くの医療情報サイトから簡単にアクセスでき、自宅や職場で空いた時間に視聴できるという利便性がある。多くの先生が手軽に最新の情報を得ることができるため、変異ウイルスのように高い「感染性」を持って広がっている(たとえが悪い?)。

 ただ、私は演者としては、従来の対面の講演会の方が好きである。まず、ウェブ講演は全国配信のため、ご当地ネタのつかみトークができない。あと、聴衆の中にキャラが立っていそうな先生を探して軽ーくイジるのがひそかな楽しみだったのだが、これができない。個人的にはけっこうキツい。

 性格がゆがみまくっている私の価値観はさておき、一般的にウェブ講演会の最大の問題点は、一方通行になりがちで視聴者との往復のディスカッションができない、ということであろう。時間内に限られた質問は受けるようにはしているが、質問内容に主催者が目を通してから選ばれたものだけが演者に渡される。

 私は講演後には全ての質問を読んでいたが、メーカーにネガティブな質問が選ばれたことはなかった。しかし、そういう質疑応答こそが医療現場にとっては貴重な情報である。ウェブ講演会は、メーカーに都合の良い情報だけ全国の医療現場に拡散するという「毒性」を併せ持っていることを忘れてはならない(たとえが最悪?)。

川口 浩(かわぐち ひろし)

1985年、東京大学医学部医学科卒業。同大学整形外科助手、講師を経て2004年に助教授(2007年から准教授)。2013年、JCHO東京新宿メディカルセンター脊椎脊髄センター・センター長。2019年、東京脳神経センター・整形外科脊椎外科部長。臨床の専門は脊椎外科、基礎研究の専門は骨・軟骨の分子生物学で、臨床応用を目指した先端研究に従事している。Peer-reviewed英文原著論文は300編以上(総計impact factor=1,643:2019年6月現在)。2009年、米国整形外科学会(AAOS)の最高賞Kappa DeltaAwardをアジアで初めて受賞。2011年、米国骨代謝学会(ASBMR)のトランスレーショナルリサーチ最高賞Lawrence G.Raisz Award受賞。座右の銘は「寄らば大樹の陰」「長いものには巻かれろ」。したがって、日本の整形外科の「大樹」も「長いもの」も、公正で厳然としたものであることを願っている。

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