急変を予測する:リスクスコアを有効に活用するには?

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

背景:リスクスコアとRapid Response Teamの問題点

 病棟業務をしていて入院患者の急変を経験しない医師はいないだろう。

「なぜこうなったのか?」
「もっと前に気付けなかったのか?」
「何か事前の対応がまずかったのか?」

 急変を経験すると、上記のようなさまざまな自責の念にさいなまれながら対応に追われるわけであるが、実際には多くのこうした急変事象には予兆があるといわれている。例えば、心停止する患者の3分の2には心停止の6時間以内になんらかの予兆があるとされている(Crit Care Med 1994; 22: 244-247)。しかし、担当医はそのうち25%程度しか認識していないということも厳然たる事実である。

 データの時代になってからは、患者が急変する前から入院時にリスクスコアなどを計算して (NEWS Scoreなどが有名)、急変ハイリスク患者を同定するということが行われるようになっているし、この他 Rapid Response System(RRS:急変兆候の規定を満たしたら担当医ではなく専属のチームをコールする)という仕組みも定着しつつある。しかし、こうした対応には2つほど大きな問題がある:

1. 誰がリスクスコアをつけるのか?
 リスクスコアが煩雑であればあるほど(予測は正確になるが)日常業務を圧迫する
2. 医療者がその警告に従うか?
 集中治療室(ICU)のモニターのアラームを想起してほしいが、余りにも多いアラームは人を疲弊させ、無視するようになる

香坂 俊(こうさか しゅん)

香坂 俊

慶應義塾大学循環器内科専任講師。 1997年に慶應義塾大学医学部を卒業。1999年より渡米、St Luke's-Roosevelt Hospital Center にて内科レジデント 、Baylor College of Medicine Texas Heart Institute にて循環器内科フェロー 。その後、2008年まで Columbia University Presbyterian Hospital Center にて循環器内科スタッフとして勤務。


帰国後は、循環器病棟での勤務の傍ら主に急性期疾患の管理についてテキストを執筆〔『極論で語る循環器内科第二版 』(丸善)、『もしも心電図が小学校の必修科目だったら』(医学書院)、『急性期循環器診療』(MEDSi)〕。2012年からは循環器領域での大規模レジストリデータの解析を主眼とした臨床研究系大学院コースを設置 (院生は随時募集中:詳細はこちら)。

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